静かな人気のNHK・BS1「空港ピアノ」はなぜ感動を呼ぶのか

公開日: 更新日:

 アイルランドのダブリン駅では、イタリア人留学生が、日本が好きだという恋人のために「花は咲く」を。日本編は神戸の西神中央駅で、視覚障害という車いすの女性は、耳で覚えた「365日の紙飛行機」を披露した。

 ピアノを習い始めて3カ月という“猫踏んじゃった”レベルのオジさん、ノリのいいアドリブで盛り上げるプロのミュージシャン、ピアニストを目指す天才少女、さらに任地に向かう軍人、恋人と別れたゲイの男性、シリア難民、オリンピック選手、ロマの男性の民族音楽、旅行中の母娘は母親のピアノで娘が歌い、遠巻きに眺めていた悪ガキは、スキを見て近づいてポンと鍵盤をたたいた。観光旅行中の高校生はロックだ。実にさまざまな人々が、楽しそうに、あるいは別離の悲しみを込めて1曲弾き、スッと去っていく。

 制作会社のディレクターは、海外で「空港ピアノ」を弾く人たちを見かけ、「どんな人なのか、なぜその曲を弾くのか聞いてみたいと思った」のが制作のきっかけと話している。1カ所で1週間前後、1日6~8時間かけて収録するという。


 番組にナレーションはなく、その人の仕事や立場、なぜここにいるのかなどが字幕で紹介され、演奏後に本人がいまの自分と夢を少し語る。このけれんのなさがいい。

 15分ほどの短編で、放送日も時間もきちんとは決まっていない。だいたい平日の午後の3時台、11時台に流れ、日曜には午後1時から45分の再放送編がある。録画しておいて、夜、寝る前にしみじみ見るのがおすすめだ。

(コラムニスト・海原かみな)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    草間リチャード敬太容疑者が逮捕…コンビニバイトと掛け持ちの苦労人だったが横山裕のセレクトに難あり?

  2. 2

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 3

    自民党は戦々恐々…公明党「連立離脱」なら次の衆院選で93人が落選危機

  4. 4

    俺と巨人ガルベスの大乱闘の一部始終…落合博満さんのヘッドロックには気を失いかけた

  5. 5

    マエケンの「DeNA入り」が急浮上! 古巣広島まさかのNO、巨人はマー君が足かせで動けず

  1. 6

    まさかの故障で失意の最中「お前はラッキー」…トシさんの言葉がなければ今の俺はいない

  2. 7

    DeNA次期監督候補に谷繁元信氏が浮上…南場智子オーナーのイチオシ、本人も願ったりかなったり

  3. 8

    米倉涼子の"体調問題"が各界に波紋…空白の1カ月間に一体何が? ドラマ降板情報も

  4. 9

    参政党の党勢拡大に早くも陰り…「聖地」加賀市で“親密”現職市長が惨敗落選の波乱

  5. 10

    公明党が「自民との連立離脱も辞さず」の背景…まさかの“国政撤退”もあり得る深刻事情