荒木経惟
著者のコラム一覧
荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<32>作家の小林信彦さんに随行…誰かと一緒に歩くのもいい

公開日: 更新日:

 この写真は、作家の小林信彦さんに随行した『私説東京繁昌記』(1984年刊)だね。青山、赤坂、原宿、六本木、新宿、銀座、渋谷、池袋、浅草、人形町…、東京の町を小林さんと歩いたね。ひとりで歩くのもいいけど、道行き、誰かと一緒に歩くというのもいい。おもしろいんだよな。小林さんは、こういうシリーズをやろうって誰かカメラマンを探してたんだって、写真家を。






 そしたら、オレが三ノ輪の実家を撮った下駄の看板の写真を見たらしいんだ。お袋が、遠くへ行っても真っ直ぐの道だから下駄を目安に帰っておいでとか、そういうような郷愁の文章と写真を見てくれて、下町のシリーズをやるときは必ずこの写真家にしようと思っててくれた。でも、もっと歳をとったヤツと思ってたらしいけどね(笑)。





〔「『私説東京繁昌記』は、寺門静軒の「江戸繁昌記」を踏まえて、高度成長後の東京の陰画をつくるつもりで、とりかかった。序章で、<かなり足を使わねばなるまい>と書いたが、そのあとで、荒木氏から『いっしょに町を歩いて欲しい』と言われ、第一章から終章まで、すべて、同行することになった。たんに、文章に写真をつけるのではなく、相互に影響し合わなければ意味がない、というのが荒木氏の説で、まことにもっともであり、青山を歩いた日に、私は荒木氏がエキサイトする対象がわかった」(小林信彦「終章 大川端・人形町」より)〕

 このときは、(カメラ)プラウベルマキナで撮ったんだよ。小林さんが作ってくれたコースを一緒に歩いた。だから、この路地が気に入ったと思っても、あまり長居をしない。だから通りすがりふうくらいのスピードで撮ってるね。妙な動感があるし移動感がある。それに小林さんの住んでいた場所や思い出の土地を再訪するんだけど、他人さまの住んでたとこでも魅力があっておもしろいんだよね。

(構成=内田真由美) 


最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 2
    大谷2戦連続6号弾 先輩の雄星も驚く「鈍感力」発揮!名門球団の重圧や水原問題もどこ吹く風

    大谷2戦連続6号弾 先輩の雄星も驚く「鈍感力」発揮!名門球団の重圧や水原問題もどこ吹く風

  3. 3
    長渕剛が誹謗中傷に《具合が悪い》と告白…《話があるなら、来てほしい》と性被害告発の元女優に呼びかけ

    長渕剛が誹謗中傷に《具合が悪い》と告白…《話があるなら、来てほしい》と性被害告発の元女優に呼びかけ

  4. 4
    松本人志に文春と和解の噂も、振り上げた拳は下ろせるか? 告発女性の素性がSNSで暴露され…

    松本人志に文春と和解の噂も、振り上げた拳は下ろせるか? 告発女性の素性がSNSで暴露され…

  5. 5
    松本人志“性的トラブル報道”へのコメント 優木まおみが称賛され、指原莉乃が叩かれるワケ

    松本人志“性的トラブル報道”へのコメント 優木まおみが称賛され、指原莉乃が叩かれるワケ

  1. 6
    広末涼子“不倫ラブレター”の「きもちくしてくれて」がヤリ玉に…《一応早稲田だよな?》

    広末涼子“不倫ラブレター”の「きもちくしてくれて」がヤリ玉に…《一応早稲田だよな?》

  2. 7
    佐々木朗希にメジャー球団は前のめりも…ロッテ首脳陣が依然として計算できない脆弱ボディー

    佐々木朗希にメジャー球団は前のめりも…ロッテ首脳陣が依然として計算できない脆弱ボディー

  3. 8
    巨人の得点圏打率.186は12球団最低…チャンスに滅法弱く、立場が危うくなった打者3人の名前

    巨人の得点圏打率.186は12球団最低…チャンスに滅法弱く、立場が危うくなった打者3人の名前

  4. 9
    阪神・岡田監督ようやく取材解禁の舞台裏 もう怖いものなし?今後の報道に忖度生じる可能性

    阪神・岡田監督ようやく取材解禁の舞台裏 もう怖いものなし?今後の報道に忖度生じる可能性

  5. 10
    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異

    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異