古希超えの仁左衛門と玉三郎が“前代未聞 月またぎ”に挑戦
コロナ禍で再開してからの歌舞伎公演は、上演時間1時間前後以内という制約から、舞踊劇や一幕で終わるものばかりが上演されてきた。それはそれで満足のいくものもあったが、やはり物足りなかった。
2月も玉三郎と仁左衛門は鶴屋南北の「於染久松色読販」を上演したが、通しではなかった。だが、これで2人は手応えを感じたのではないだろうか。「桜姫東文章」の、仁左衛門・玉三郎での上演が、1985年以来、36年ぶりに実現した。
長い芝居で、2人の年齢を考えると体力的にもう無理と思われていたが、コロナ禍での上演時間の制約を逆手にとって、4月は前半だけ、後半は6月に上演する形だ。「仮名手本忠臣蔵」のように長い芝居を昼の部・夜の部の通しで上演することはよくあるが、このように月を越えての上演は、たぶん前例がない。「仁左衛門・玉三郎で桜姫」と発表されると同時にツイッターには歓喜の声があふれ、チケットは完売のようだ。
もともと鶴屋南北の作品は人間関係が複雑で突拍子もない筋立てのものが多いが、なかでも「桜姫東文章」は、お姫様が女郎になるという、破天荒な物語。