南こうせつさん 高校時代に聴いたPPM「虹と共に消えた恋」が僕の分岐点に

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南こうせつさん(シンガー・ソングライター/72歳)

 フォークグループ「かぐや姫」の元リーダーであり、ソロでも活躍する南こうせつさん。8日には2年半ぶりのオリジナルアルバムをリリースしたばかりだが、改めて思い出す忘れられない一曲は高校時代に聴いたPPM(ピーター・ポール・アンド・マリー)の「虹と共に消えた恋」――。

 ◇  ◇  ◇

 人生を変えた曲は節目節目でありますね。ひとつは多感な中高生時代にギターを持つきっかけ、フォークを選ぶきっかけにもなったPPMです。グループの3人できれいにハモるPPMを聴いてフォークの世界にスッと入っていくことができました。

 高校生の時に、大分市内の商店街を歩いていると、楽器店のスピーカーから歌が聴こえてきたんです。「Johnny's gone for a soldier」というメロディー、だれが歌っているのかなと思って見ると、PPMというグループの「虹と共に消えた恋」という曲でした。すてきだなと思っていたらお店の人に声をかけられて、「ギターと歌だけで説得力がありますね」と話をしたのを今でも覚えています。

■キレイなメロディーで戦争を憂う曲

 出だしでシュル、シュル、シュラルーと歌っているけど、何のことなのかな、でも、ジョニーという青年が戦争に行っちゃったというのはなんとなくわかる。きれいなメロディーで戦争を憂えている。戦争をやめろ! とかじゃなく、こんなふうに平和を訴える歌があるんだと感じました。ベトナム戦争が泥沼化している60年代のことです。

 中学に入りたての頃、加山雄三さんの「恋は紅いバラ」に衝撃を受けました。アイ・ラブ・ユー、イエス・アイ・ドゥ……いい曲だなあ。夕方、五右衛門風呂に入りながら、ラジオから流れてくる洋楽番組を聴いていたらこの歌が登場し、日本人だとわかった時にはただ驚くばかりでした。それから加山さんは次々とヒット曲が続き、日本のシンガー・ソングライターの元祖だと思っています。

 洋楽ではなんといってもニール・セダカ「おお!キャロル」、フォー・シーズンズ「シェリー」、ジョニー・ディアフィールド「悲しき少年兵」、さらにプレスリー、シナトラがいて、トニー・ベネット……。どれもこれも大好きでした。

2003年の拉致問題の時にポールから連絡が

 やがて時は、中学生から高校生へと流れヒットチャートも変化し、僕はボブ・ディランやPPMの歌っているフォークが好きになっていきました。

 決定的にそれまでと違うのは社会問題を取り上げていることです。それまでは、おまえが好きだ、今夜おまえを落とす……全部がそうだった。「君を抱きたい」と歌うのもいいけど、それはちょっと横に置いておいて、今、大事なのはこれだと思ったわけです。

 当時は先輩のザ・フォーク・クルセダーズが酔っぱらいを風刺した「帰って来たヨッパライ」を歌い、「イムジン河」で朝鮮半島情勢のことを歌っていました。岡林信康さんの「私たちの望むものは」も話題になっていました。僕もそっちに流れ、その分岐点になったのが、最初に出てきた高校時代に聴いた「虹と共に消えた恋」だったのかなと思います。

 PPMはピーター・ヤーロウ、ポール・ストゥーキー、マリー・トラバースの3人です。マリーは金髪でスタイルがよくて、歌う姿もカッコよくてね。ポールとピーター・ヤーロウはそれ以前の泥くさいフォークではなく、おしゃれでメッセージ性のあるモダン・フォークの世代です。2人はニューヨーク、グリニッジ・ビレッジのライブハウスで歌っていました。ボブ・ディランとは65年の伝説的なニューポート・フォーク・フェスティバルで共演しています。

 この流れが日本では学生を中心に、コピーするだけではなく、オリジナルでメッセージしていく歌になっていきます。その代表が、小室等さんの六文銭、フォーク・クルセダーズ、五つの赤い風船……。それからさらに吉田拓郎やかぐや姫という流れです。

 ポール・ストゥーキーさんとは何度かお会いしたことがあります。2003年の拉致問題の時、ポールから連絡がありました。彼は日本へ来て、当時の小泉総理と面会し、「ソング・フォー・メグミ」という歌を横田めぐみさんのために歌いました。時を同じく僕も拉致問題をテーマに「国境の風」という歌を作りました。久しぶりにポールと会って、コーヒーを飲みながら、拉致問題の話や世界中の貧困に苦しんでいる人々の話など、やっぱりお互いフォークシンガーだよね、という話をしました。

■「神田川」はラジオの深夜放送から火がついた

「神田川」は60年代、70年代の葛藤があったからこそ、ヒットした曲です。そしてラジオの深夜放送から曲が流れて火がつき、ミリオンセラーになりました。リクエストした俺たちが育てた曲だという思いがあるので、今もコンサートに足を運んでくれるのだと思います。

 去年はコロナでコンサートがゼロの月もあったけど、デビューしてから走り続け、こんなに自分と向き合う時間ができたのは初めてです。

 そんな中で奇跡的に曲ができました。「夜明けの風」は僕から今、この時代にみなさんに届けたいメッセージです。

(聞き手=峯田淳/日刊ゲンダイ

▽オリジナルアルバム「夜明けの風」(9月8日リリース)

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