<70>野崎幸助さんのミエで新装したピンクの壁、予算は2500万円
                        
「いやあ、あんなに社長が激怒したのを見たのは初めてです。もう材料は発注しているので、ここでやめられたら大損ですから、吉田さん、なんとか社長をなだめてください」
 Kさんは電話の向こうで私に懇願した。
「社長、塀の工事は順調にできていますか?」
「イヤ、Kのヤツが手抜き工事をしやがって……」
 ドン・ファンにご機嫌伺いの電話をかけるとKさんの悪口をとうとうとしゃべり始めた。
「なるほど、そうでしたか。でもKさんがそんな方じゃないのは社長も知っているから付き合ってきたんでしょ。あまり追い詰めると社長のほうが損をすると思いますよ」
「そうかなあ」
 ドン・ファンの気持ちが傾いたのが分かった。
「Kさん、2、3日して社長に挨拶に行ったらええと思いますよ。まだくすぶっている時に行けば発火するかもしれませんから」
「ありがとうございます」
 Kさんは3日後に菓子折りを持ってドン・ファンの自宅に出掛け、ことは収束したのである。
                    

                                    
                                        


















