著者のコラム一覧
荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

赤塚不二夫さん<2>「バカボンのパパ」姿の赤塚不二夫さんは自分でブランコ座ってこぎ出したの

公開日: 更新日:

 こうやって自分が撮った写真を見ると、忘れていたことも思い出すね。写真を撮ったときのことをさ、思い出すよ。

 赤塚さんがバカボンのパパの格好をしているこの写真を撮ったとき、20年ぶりかなぁ、久しぶりに会ったんだよね(雑誌『PENTHOUSE』<世紀末アラーキー写交録A対談 赤塚不二夫VS荒木経惟>1999年2月号掲載)。

“命短し恋せよ乙女”って歌いながらこいでるんだよ

 赤塚さん、感度がいいっていうか、これ撮るときに、近所を一緒に散歩しようって、この格好で歩いたの。途中でブランコがある公園があったので、オレはさ、これはアレしかないって思ったんだよ。赤塚さん、いつも話してくれるのはね、ジョン・フォードの『駅馬車』ばっかりなんだよ。馬の走り方がすごいとか、馬の動きがいいとかなんとか。映画の話はそればっかりなんだけどね。

 このときね、ちょっとアレやって欲しいなって思ったんだよ。『生きる』だよね。(映画)『生きる』のブランコ。そしたら、赤塚さん、オレが撮りたいって言う前に、自分でブランコ座ってこぎ出したの。おっ、オレが思っているのとあってるなって。そんでね、さえずるっていうか歌うというか、“命短し、恋せよ乙女”って歌いながら、こいでるんだよ。だから、たまらないよ。やっぱりね、あの人はたいした人だよ。

自分の紫綬褒章を出して「オマエがもらってくれ」って

 赤塚さん、病院を出たり入ったりしててね。退院すると、すぐ隠れて飲んでんだよ。「また怒られますよ」って言うと、水で割ってるから大丈夫なんだよって(赤塚は大の酒好きとして知られ、1998年の食道ガンの手術後も酒を手放すことがなかった)。

 オレはオーストリアから勲章をもらったけど、それより前に、最初にオレに勲章をくれたのは赤塚さんなんだよ。自分の紫綬褒章を出して、「オマエがもらってくれ」って握らされてね。帰るときに奥さんに返したよ(2008年9月、オーストリア国最高位の「科学・芸術勲章」が荒木に贈られた。その前月の8月2日、2002年より脳内出血のため闘病生活を送っていた赤塚不二夫が72歳で永眠)。

(構成=内田真由美)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景

  5. 5

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  3. 8

    三谷幸喜がスポーツ強豪校だった世田谷学園を選んだワケ 4年前に理系コースを新設した進学校

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋