財前直見さんが明かす「大分・東京 2拠点生活」のリアル

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財前直見さん(女優・55歳)

 華やかなトレンディードラマの世界から一転、田舎暮らしを満喫中だ。2007年に実家のある九州・大分に拠点を移し、大分市内の自宅と実家が所有する山や畑を往復する日々。大自然の恵みの中で子供を育て、「東京にいる時は女優の顔、それ以外は息子のママ」という「2拠点生活」のリアルを聞いた。

 ◇  ◇  ◇

 ――コロナ禍で都会と地方の両方に拠点を置くサラリーマンも増えましたが、財前さんはすでに14年のキャリアです。

 昨日、ザクロを収穫して、果肉を取ってザクロ酒とザクロジュースを作ったら、爪の間が真っ黒になって、なかなか取れないんですよ(笑い)。ヘアメークさんにマニキュアを二度塗りするようにキツく言われたところです。田舎にいると、ひとつ収穫が終わると次の収穫物があって、保存食にしたり、何かしら作業があって忙しくて。大分にいる間は手元も全然構わないんですよ。

 ――ステイホーム期間中はどう過ごされましたか?

 朝は鳥のさえずり、夕方になるとフクロウの声が聞こえ、自然のにおいを感じ、大分の家にいる分にはコロナ前と生活は変わらないですね。ただ、学校がリモート授業になって、昼間いないはずの中3の息子が家にいて、授業風景を家庭で眺められるのは新鮮でした。息子には「あっち行ってて、シッシッ」って言われちゃうけど、息子の友達の声がこんなに低かったんだ、とか、生徒を“◯◯先生”って呼びかける先生とか授業も面白そうだななんて思ったり。女の子たちはしっかりしていて、うちの子は学校で全然話を聞いてないんだなーと思ったり(笑い)。これまでわからなかった学校での様子が垣間見られるのは、ステイホームのギフトですね。

■子育ては周りの力を借りた“放任”

 ――田舎での子育てに不自由や苦労はありませんか?

 大分に戻ってきてからは父母や近所のおじいちゃん、おばあちゃんたちが子連れでも大丈夫なごはん屋さんに連れていってくれたり、周りの方が面倒見てくれて。毎日温泉に連れていってもらっていましたね。自分が子供時代から知っている方たちなので、気兼ねなく甘えられます。息子が4歳になるまでは子育てに集中し、ドラマの現場に復帰してからも台本を覚えるのは東京に向かう飛行機の中でした。家にいる間は24時間息子のママ。子供が甘えたいのを「今日は台本覚えなきゃならないの」なんて、むげにすることもなく、いい切り替えになっています。私が東京にいる間はじいじとばあばが愛情を注いでくれているので、私のことなんか興味ないですよ(笑い)。両親も子供といると若返りますし、もし東京で生活していて、小さな子が1人で鍵を開けて誰もいない家に帰るなんて想像したら……。息子にとってはよかったかな。

 ――大分での食生活はいかがですか?

 ウチで収穫して、旬のものを食べ、保存食を作り、みんなに食べさせてあげるって、何より幸せ。ウチで取れたカボスを分けたら、お返しにお魚を頂いたり、食材が循環して心も体も豊かになります。スーパーで買った青梅でも自分で漬けたりすれば全然違うし、なかなか人に会えなくても、作ったものを送ることはできる。そんな手作りのものが届いたら、家族もすごくうれしいと思うんですよね。多めに作りすぎたかな、なんて思うとテレビや雑誌の取材が来てくださって。ばあばと私がスタッフの方にお弁当を作って消費できちゃいます。田舎にはロケ弁なんてありませんから、取材がある時は、お弁当を作っておもてなししているんです。ウチでできたものをスタッフの皆さんがおいしそうに食べてくださるのを見るのも、とてもうれしいですね。

「アンチエイジングの頑張りすぎは過去への執着だと思うんです」

 ――田舎暮らしはご高齢の方々に支えられているそうですね。

 魚釣りや手芸や畑など皆スペシャリストで、子供たちにとって最高の先生ですね。高齢になると、せっかく便利家電を買ったのに1回使って面倒になっちゃう人もいます。でも、そういうおばあちゃんは意外と情報力にたけていて、どこの病院のお医者さんがいいとか詳しかったりします。それぞれ得意分野があるので、お互い補い合っています。田舎の大先輩方はとても元気ですよ。

 ――子育てに関して方針はありますか。

 今一緒にいるのが幸せで、目の前にいる息子が可愛いからそれでいいんです。進路については息子には好きなことを仕事にできたらいいね、って言うだけ。我が家は宿題とか、やることさえやれば、あとはゲームも好きなだけやっていい。もしかしたら将来につながる何かがあるかもしれませんし。私自身はバブル時代と、バブルがはじけた時代の両方を経験したように、時代の変化には息子なりに対応していくはずだと思っているので。将来を悲観したり心配する必要もないと思っています。

 ――ドラマ「お水の花道」(フジテレビ系)でバブリーなホステスを演じていた時代もありました。

 あの時は毎日ロケ弁で、ぜんぜん華やかではなかったですよ(笑い)。田舎育ちですから、休みになると料理がしたくなるけれど、時間がなくて食材が使い切れずダメにしたり。「どんなにつらいことがあっても、お客さまに見せる笑顔は同じ、ここは舞台。私たちは女優よ」って決めゼリフで、あんなに見えを張る演技が毎日だった時代もあったけど、今はガッチリ見えを張る演技をする時もあれば、自然体の時もある。そういう二面性を併せ持つ女優がいてもいいんじゃないかなと思っています。

■「今に集中すれば年は取らない」

 ――エイジングケアもシンプルになったそうですね。

 年を取ることも生きている醍醐味だと思います。昔は高級エステに通った時代もありましたけどね……。今では自家製の化粧水だけ、ほとんどケアをしていないんです。我が家でテレビ収録する時はヘアメークさんもいないし、すっぴん。田舎では化粧している方が違和感がありますから。アンチエイジングを頑張りすぎるって、過去に執着しているんだと思うんですよね。若い時の自分と比べて良くないところを探して落ち込んでいる。何か作業に集中していると無になるように、今に集中していれば年を取らない気がするんです。今の人は髪も洗いすぎ。昔の人は月に1回しか洗わなかったくらいですから、お湯ですすぐだけで十分です。

 ――今後のビジョンはいかがですか?

 NHKの大河ドラマではひいおばあちゃんを演じる機会もいただきましたし、年を重ねたからこそできる役がまだまだあるから楽しみ。いろんなことにチャレンジしたいですね。

(聞き手=岩渕景子/日刊ゲンダイ)

▽財前直見(ざいぜん・なおみ) 1966年、大分県生まれ。84年のデビュー以来、数多くの映画・ドラマに出演。主な作品に「スチュワーデス刑事」(フジテレビ系)、「お水の花道」(同)、NHK大河ドラマ「義経」「おんな城主 直虎」など。プライベートでは2007年に生活拠点を生まれ故郷の大分に移し、田舎暮らしにシフト。今月5日に「直見工房 財前さんちの春夏秋冬のごはんと暮らし」(宝島社)を上梓。

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