著者のコラム一覧
大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

無念すぎる「岩波ホール」の閉館…偉大なる歴史と功績を振り返る

公開日: 更新日:

 今、改めて思い出すことは限りがない。ここでは2,3を挙げるにとどめる。まず上映にあたり、「エキプ・ド・シネマ」(映画の仲間)という標語を掲げたことが象徴しているように、同館のスタートには「映画上映運動」という意味合いがあった。これが非常に重要である。

■「映画上映運動」への意識

 芸術的映画の上映を目指し、1960年代から始まるATG(アートシアター)もまた「映画上映運動」という意識を強くもっていた。ATGは周知のように、60年代末には低予算(1000万円映画ともいわれた)の邦画の拠点になり、洋画が減少していく時代的な背景があった。だから、高野、川喜多両氏は、ATGの役割を世界映画にまで広げる強烈な思惑があったのかもしれない。

「運動」とは言葉だけでは採算度外視のように見えるが、そうではない。ATGが採算的な制約が次第に足かせになっていくように、「エキプ・ド・シネマ」もまた逃れられない。高邁な志だけでは「運動」の継続期間は短いのだ。そこでさまざまな取り組みを試みるが、なかでも特筆されるのは会員制度の充実と宣伝の多角化だ。前者は高野氏の文化人としての発信にはさまざまな影響力もあり、女性層の絶大な支持を得ていく。観客たちは「映画上映運動」を後押ししたのだ。後者では配給会社と足並みを揃える形で宣伝へのかかわりを強くした。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  2. 2

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  3. 3

    阪神・佐藤輝明が“文春砲”に本塁打返しの鋼メンタル!球団はピリピリも、本人たちはどこ吹く風

  4. 4

    自民両院議員懇談会で「石破おろし」が不発だったこれだけの理由…目立った空席、“主導側”は発言せず欠席者も

  5. 5

    広末涼子「実況見分」タイミングの謎…新東名事故から3カ月以上なのに警察がメディアに流した理由

  1. 6

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃

  2. 7

    国保の有効期限切れが8月1日からいよいよスタート…マイナ大混乱を招いた河野太郎前デジタル相の大罪

  3. 8

    『ナイアガラ・ムーン』の音源を聴き、ライバルの細野晴臣は素直に脱帽した

  4. 9

    初当選から9カ月の自民党・森下千里議員は今…参政党さや氏で改めて注目を浴びる"女性タレント議員"

  5. 10

    “死球の恐怖”藤浪晋太郎のDeNA入りにセ5球団が戦々恐々…「打者にストレス。パに行ってほしかった」