有森隆
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有森隆経済ジャーナリスト

早稲田大学文学部卒。30年間全国紙で経済記者を務めた。経済・産業界での豊富な人脈を生かし、経済事件などをテーマに精力的な取材・執筆活動を続けている。著書は「企業舎弟闇の抗争」(講談社+α文庫)、「ネットバブル」「日本企業モラルハザード史」(以上、文春新書)、「住友銀行暗黒史」「日産独裁経営と権力抗争の末路」(以上、さくら舎)、「プロ経営者の時代」(千倉書房)など多数。

「東映アニメーション」がサウジと合作映画を製作 世界を見据え東映との親子上場解消?

公開日: 更新日:

 日本のアニメーション制作の草分けである東映アニメーション(ジャスダック上場)が世界市場を見据えている。2021年6月、サウジアラビアのアニメ制作会社マンガプロダクションズとタッグを組み、日本とサウジの合作アニメ「ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語」が中東各国で上映された。監督は劇場版「名探偵コナン」で知られる静野孔文が務めた。

 マンガプロダクションズはサウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が立ち上げたミスク財団の子会社。

 東映アニメとサウジとのつながりは11年、東映アニメ顧問の清水慎治がサウジに招待され、当時プリンスだったムハンマドに会ったことに始まる。日本のアニメが大好きなムハンマドは「ゲゲゲの鬼太郎」「銀河鉄道999」など有名アニメを手がけた清水と意気投合した。

 21年9月、車田正美の人気マンガ「聖闘士星矢」の実写版のハリウッドでの製作を発表した。

 10月、映画「愛の不時着」や「パラサイト 半地下の家族」など人気作品の製作・配給で知られる韓国のエンターテインメント企業「CJ ENM」と業務提携した。ヒット作のアニメ化や実写化を含め23年から活動開始だ。

 21年3月期の売り上げのうち海外の比率は58%。既に国内を上回っている。最も多いのはアジアで138億円。全体の3割弱を占める。

 22年3月期の連結決算の売上高は前期比1%減の510億円、営業利益は7%減の145億円、純利益は8%減の102億円の見込みだ。

 売り上げに計上予定だった大型劇場作品が来期以降にずれ込むため減収減益となるが、海外版権事業で「ドラゴンボール」や「ONE PIECE」「デジモンアドベンチャー」シリーズが好調だ。版権ビジネスは利益率が高く、売上高営業利益率が28.4%(22年3月期の予想)と抜群の高収益企業なのである。

 株式市場では親子上場銘柄として注目が集まる。東映アニメの親会社は東映で出資比率は33.57%(21年3月期末)。東証の市場再編が親子上場解消の背中を押す。

 東証1部上場企業が新たな最上位市場と位置付けられるプライムに移るためには「流通株式比率35%以上」をクリアしなければならない。東映アニメが上場しているジャスダック市場からでも「25%以上」が求められる。

親子上場を解消?

 東映アニメの大株主には東映のほか、テレビ朝日(19.64%)、バンダイナムコホールディングス(10.80%)、フジ・メディア・ホールディングス(10.07%)が名を連ねており、21年3月末の大株主比率は87.93%に達する。

「親会社の東映がTOB(株式公開買い付け)を実施して親子上場を解消するのではないか」(エンタメ業界を担当するアナリスト)との期待から株価は高止まりしている。だから、昨年12月30日時点の時価総額は東映アニメが4809億円なのに対して東映は2590億円と親子の力関係が逆転している。

「東映アニメとフォークリフト大手の三菱ロジスネクスト(東証1部、三菱重工業が64.63%出資)が次の焦点」(M&Aに詳しいアナリスト)といわれ、上場来高値は2万5110円(21年9月15日)である。=敬称略 

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