“反維新”で参院選出馬の水道橋博士に聞く「政策の一丁目一番地は反スラップ訴訟法です」

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浅草キッド 水道橋博士

 参院選(22日公示、7月10日投開票)が迫っている。「自民大勝」の観測が流れ、野党がバラバラになる中、「反維新」を掲げてれいわ新選組からこの男が立つ。「れいわ旋風」が巻き起こった前回2019年の参院選から3年。流れを引き寄せられるのか。胸の内を聞いた。

■「演説も政策立案も芸人の延長上です」

 ──先月18日に比例代表で出馬すると表明して以降、事前告知なしのゲリラ演説を重ねています。街頭でマイクを握ってみて、手ごたえはどうですか?

 ゲリラ街宣という手法を知らなかったから、驚きでしたね。芸人としてはメチャクチャ面白い。浅草キッドで漫才をする時は、僕らに笑いを期待してお金を払ったお客さんの前に立つわけですが、ゲリラ街宣は行き交う人の足を止めて聞き入ってもらわなければならない。その場の聴衆に思いを届かせるためには言霊も大事だし、起承転結も必要だけど、事前準備はしていません。現場で周りをながめ、聴衆を見ながら話題を組み立ててしゃべっています。初めての漫談をやっているような感じです。エキサイティングです。

 ──楽しんでいますね。

 ある意味、芸人の延長上です。政策を考えるのは、新ネタを練るのと一緒。例えば、戦争反対は普通のネタだけど、経口避妊薬の使用をめぐる議論は、身近な「あるある」を考えることだと思います。ディベートでは、賛否のどちら側が観客の心を揺らせるかを自分の中でシミュレートしています。自分でも詰めが甘いなと思う演説もありますし、口調を変えてみたり、ローテンションで入ってみたり、とにかくいろいろ試しています。舞台袖が芸人にとって勉強になるように、他の人の演説も勉強になります。

 ──博士を名誉毀損で訴えた日本維新の会代表の松井一郎大阪市長の都内の街宣も見に行き、直撃したそうですね。

 正直、退屈な演説でした。銀座の演説は聴衆29人。拍手もまばらでした。そもそも、なぜ直撃したのかというと、松井さんのスラップ訴訟の対象となり、僕自身が被告になったからです。参院選に出馬するキッカケでもあります。松井さんの経歴を解説した他人のユーチューブ動画を紹介し、「これがもしも事実だったら訴えるべきですよ」とツイッターに投稿したら、松井さんは動画の内容を要約したサムネイルの文言について「これは名誉毀損で判決が出ています」と反射的に応じてきた。それから突然、法的手続きをとるとツイッター上で言ってきて、博士をリツイートした人も訴えると。僕の投稿をリツイートした無辜の市民4000人も威圧したのです。4月下旬に分厚い訴状の束が送られてきた。それで先月15日に新宿と銀座の街宣で直撃しました。その際、松井さんは「司法で決めましょう」と言っていたのに、先月30日に大阪地裁で開かれた第1回口頭弁論には案の定、姿を見せませんでした。

 ──松井市長との直接対話を試みた直後に行ったのが、れいわの山本太郎代表の街宣でした。

 松井さんの街宣を見た後に、縁あってれいわの街宣を見に行くことになりました。その時の一問一答で、松井さんからの訴状を掲げ、山本代表に「れいわの方で反スラップ訴訟法を作っていただくことはできませんか」と質問したら、「被害者のあなた自身が国会で作ったらどうですか」と返された。正直、ビックリしました。当初は立候補に必要な供託金600万円を党に用立ててもらうことは自分の流儀に反すると思いましたが、例外はあるにせよ、通例として党が供託金を出すものだと周囲に教えてもらって、家族を説得し、れいわの街宣から3日後に出馬を発表しました。もともと、消費税廃止や憲法改正反対など、れいわの基本方針が持論と一緒だったので、そういう政策面での一致も渡りに船でした。

 ──山本代表とのアドリブのやりとりから始まり、まさに電撃出馬です。

 選挙に出るとなると、地上波のレギュラー番組は降板しないといけない。番組サイドにも迷惑がかかってしまう。今はレギュラー番組がないので、そういう意味では出馬しやすいタイミングでした。妻からは、子ども3人が中学生、高校生、大学生なので「教育費に手を付けることはやめてください」と言われ、娘からは「自分は公の仕事に就きたい希望があるから、その時に後ろ指をさされるようなことはしないでください」ということを言われました。「家族に迷惑をかけないのであれば出てもよい」と受け止めました。息子2人には相談しませんでした。僕のやろうとすることに、あまり厳しくないから(笑)。

仮に当選しなくても、今回が最初で最後でもない

 ──過去にも出馬の打診があったそうですが、もともと政治が視野に入っていたのですか?

 もともと、ないです。中学校の先輩である(立憲民主党の衆院議員)江田憲司さんが、当時所属していた「みんなの党」から出ないか、と打診してきたことがありました。江田さんは殿(ビートたけし)と先に話を詰めていたそうですが、その時は殿に「出たくないです」と伝えました。東さん(前宮崎県知事の東国原英夫氏)が2007年の知事選に出馬するにあたり、師弟関係を解消した前例があったからです。そしたら、殿は「今回は例外にするから出ろよ」というふうにおっしゃっていました。面白がっていたんですよ。東さんが宮崎県知事になり、岡山県は水道橋、熊本県は井手らっきょだろ、と。そんな冗談が伝わって、橋本龍太郎元首相のご子息である(自民党の衆院議員)橋本岳さんが内々に僕のところへ来て「本当に県知事選に出るのか、出ないのか、ハッキリしてほしい」と言うほど、大きなウワサになりました。

 ──国会議員として何を実現したいですか。

 政策の一丁目一番地は、反スラップ訴訟法です。これは左右のイデオロギーに関係なく、賛成してくれる人が多いのではないかと思います。仮に当選しなくても、今回が最初で最後でもないなって思います。芸人の修業としても、なかなかいいじゃないかと思っていますから。

 ──岸田内閣は高支持率をキープ。「自民大勝」との情勢調査もあります。

「何もしない首相」だと支持率はこんなに上がるのか、というのが実感です。言葉に力のない首相のせいで、日本の政治が低迷していると思いませんか? 演説力のあるリーダーを見ると、うらやましいですよね。それこそウクライナのゼレンスキー大統領、イギリスのジョンソン首相もコロナ禍で前面に立って国民にメッセージを送っていた。安倍元首相も恐らくやろうとしたんだけど、そもそもスピーチが得意ではなかった。言葉の中身のない人がリーダーだから、政治そのものが活性化しないし、聞いている国民も言葉の力を信用できない。国会で118回もウソをついた人がかつて首相を務め、いまだに影響力を残そうなんて、おかしな話じゃないですか。

■小石を投げれば波紋を生み「岸田」まで届く

 ──そんな政治状況になってしまったのも、投票率の低さが要因では?

 日本人は我慢が好きだし、虐げられても、お金をあげるって言われても、要りません、努力しますというメンタリティーじゃないですか。コロナ禍の中、世界中で消費税減税や手厚い給付が行われているのに、日本だけですよ、皆が耐えに耐えているのは。将来が不安で結婚できない、子どもを産むこともできない、経済的に安定した生活を送ることができないけれども我慢する。「政治が悪いからだ」とならないのが不思議です。維新の言葉を借りれば、それこそ「政治は結果責任」なのに、例えば大阪府のコロナ死者数が人口比で47都道府県で最悪でも、なぜもっと抗議の声が出ないのか。失政の連続じゃないですか。社会に不安を抱えながら、未来にも期待できないのに、政権批判を許さない立場に立って勝ち組に回る人もいる。そのメンタリティーが問題だと思います。

 ──批判を嫌う風潮も広がっているように思います。

 批判をしない人に対して、批判しようとは思いません。ただ、投票には行ってほしい。静かな湖面に小石を投げれば、それが波紋を生み「岸田」まで届く、と思っています。

(聞き手=高月太樹/日刊ゲンダイ)

▽水道橋博士(すいどうばしはかせ) 1962年、岡山県生まれ。本名は小野正芳。ビートたけしに心酔し、猛勉強の末に進学した明大経営学部を4日で中退。追っかけを経て弟子入り後、87年に玉袋筋太郎と漫才コンビ「浅草キッド」を結成。現在、阿佐ヶ谷ロフトAでライブイベント「阿佐ヶ谷ヤング洋品店」を定期開催。「藝人春秋Diary」(スモール出版)など著書多数。

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