山根康広さんを変えた「Burn」、歌謡曲を聴いていた中3の少年が文化祭でロックを…

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山根康広さん(ロックシンガー・ソングライター/57歳)

 デビューシングル「GET ALONG TOGETHER」の大ヒットで知られるロックシンガー・ソングライターの山根康広さん。音楽に目覚めたのは中学3年で聴いたディープ・パープルの「Burn」だった。

  ◇  ◇  ◇

 幼稚園時代からピアノは習っていたけど、小学校から中学にかけては普通の子供でしたね。幼い時の記憶がある音楽というと父親が聴いていたジャズ。それも横で聴いていたくらいですけど。普段はテレビでアイドルが歌っているような歌謡曲を聴いたり歌ったり。アリスとか甲斐バンドとかも聴いていたかな。洋楽ではビートルズ、ABBAとか。まだ音楽へのこだわりがなかった時代です。

 ただ、他の子と違っていたのは聴いた曲をピアノでコピーして弾いたりしていたことですね。

 そんな僕にとって、ハードロックとの出合いはリアルタイムじゃないけど、衝撃でした。最初に聴いたのは中学3年、15歳の時です。その頃はまだハードロックなんて知りません。どういう経緯なのか、文化祭でギター、ピアノ、ドラムのバンドを組んでディープ・パープルの「Burn(紫の炎)」(1974年)をやることになっていた。それでバンドを組んでいたギター小僧の「遠藤君」が、僕がピアノを弾いているのを知っていて、誘ってくれたんです。

■ボーカルもドラムもギターもすごかった

「遠藤君」には一度「Burn」を聴いてみてと言われました。言われるままに聴いたら「何、これ、こんなの聴いたことない」と驚きました。ものすごいインパクトでした。デービッド・カバーデールのボーカルはハイトーンだし、イアン・ペイスのドラムはやたら回す、リッチー・ブラックモアのギターテクニックもすごかった。

 こんな音楽を本当にやることができるか。自信はまったくありませんでしたが、僕はキーボードのジョン・ロード(当時のメンバー)をやることになりました。

 ハードロックは音がうるさいから練習する場所がない。「遠藤君」の家は教会です。メチャクチャな話ですが、教会でやろうかという話になってそこを借りることになりました。練習といっても、当時は、エレキギターにオーバードライブのエフェクターだけじゃ、レコードの音のようには、ヒズまない。やはり、爆音でデッカいギターアンプをヒズませないと「Burn」の音には、ならないんですね。

 でも、練習して文化祭で演奏したら、当然レベルは違うけど、なんとなく雰囲気は出ました。その時に音楽をやって初めて高揚感を味わうことができました。それを機にシンセサイザーやオルガンなんかもどんどんやるようになりました。アイドルがビッグバンドをバックにライブで歌うことはあったけど、当時はまだバンドそのものが少ない時代です。バンドで記憶にあるのはゴダイゴくらいかな。そんな時代にバンドサウンドのカッコいいロックにハマっていって、バンドをやるようになります。

■大学卒業でバンド活動をやめ、サラリーマンに

 ディープ・パープルのアルバムは買っていたけど、まだレコードが高い時代です。高校に入った頃にはレンタルレコード屋ができて、借りてきては録音をして聴いていました。KISSをジャケ買いしたりしたこともあります。

 そしてハードロックを入り口にいろいろ聴いているうちに、イーグルスのようなシンプルなロックとかブルース・スプリングスティーンとかの聴きやすい音楽も好きになるんですけどね。その辺からバンドとしてはコピーから、オリジナル曲を作るようになりました。

 僕はピアノをやっていたからキーボードから入ったけど、その後ドラムもやりました。そのうち他のバンドとやる対バンとか、よそのバンドと組んでやるようになり、わかっていったことがあります。自分たちはイケてると思っていても上には上があるということ。それでドラムをやめ、いろんなパートをやっているうちに僕に歌、ボーカルが回ってきました。元々曲を作るのが好きで書いていたので、オリジナルの曲を歌って、バンドとしてデビューすることを目指しました。

 当時からあった大阪・梅田のライブハウス、バナナホール(現umedaTRAD)、今はないバーボンハウスでライブをやるようになりたい……。コンテストもあった時代なので出たりしながら。

 でも、僕はモヤモヤしていた。その頃はバンドではギターが一番の人気です。次がドラムで、ボーカルは誰かあいている人がやればいいという時代ですから、人気がなかった。

 そうしているうちに大学を卒業する時期になってメンバーが就職するというので1人欠け、2人欠け……。僕も親から「大学まで行ったんだから、就職して働きながらじゃないとバンドはダメ」と言われ、ミュージシャンへの道をいったん諦め、4年間のサラリーマン生活。最初の2年間は、働きながらバンドをしていましたが、後半は、音楽もやめていました。

 でも、僕らを見に来ていたファンから「またやってほしい」という手紙をもらったのをキッカケに、一人でもやるしかないと思い立ちました。昔のメンバーに手伝ってもらって2、3カ月に1回ライブハウスでやるようになって。ただ、キツかったですね。費用は以前は全員で割っていたのに交通費まで全部自分持ちですから。

 それでもやるしかないと思って、デモテープを作り、休日に東京まで出かけて売り込みに行きました。「アルバムを出そうか」と言ってくれたのは日本クラウンです。ただし、お金も録音もジャケットも全部自分でというのが条件。要するにインディーズみたいなものですね。

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