著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

妻の実家の居間の壁に飾られた見慣れない刺繍絵をめぐるエピソード

公開日: 更新日:

 正月、妻の九州の実家を訪ねた。

 この冬に入って一番の寒さだった。木製の玄関扉のノブに手を伸ばす。こんなに重かったっけ。結婚して20年とすこし。この扉もそれと同じ長さの歳月を経たのだな。

「お久しぶりです」

 扉を開けた途端、先に帰省していた子どもたちの声と、かの地特有の甘辛い醤油を煮詰めた香りが、ぼくの鼓膜と鼻腔に同時に飛び込んでくる。眼鏡のレンズを曇らせる暖気は、エアコンだけが生みだしたものでもなさそうだ。

 腰を屈めて三和土に脱いだ靴を前向きにそろえる。普段の生活では縁遠いこんな所作こそが柳田国男のいうハレ、正月という非日常なのだろう。立ち上がる時に「よっこいしょ」と独りごちた自分の声と間合いが、一昨年に他界した父とそっくりであることに気づき、微苦笑を禁じえない。

 居間の壁に見慣れない刺繍絵があるのに気づく。帽子が飛ばされるほどの強い寒風に耐える人びとや木々が描かれたその絵は、今日のような寒い日にはうってつけだ。クロスステッチというのだろうか、凝った図柄ではないのだけれど、余白の多いところもぼく好み。だが……はたして義母に刺繍の趣味があっただろうか。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「豊臣兄弟!」白石聖が大好評! 2026年の毎週日曜日は永野芽郁にとって“憂鬱の日”に

  2. 2

    川口春奈「食べ方が汚い」問題再燃のお気の毒…直近の動画では少しはマシに?

  3. 3

    あの人「なんか怖い」を回避する柔らかな言葉遣い

  4. 4

    自分探しで“変身”遂げたマリエに報道陣「誰だかわからない」

  5. 5

    (1)高齢者の転倒は要介護のきっかけになりやすい

  1. 6

    2度目の離婚に踏み切った吉川ひなの壮絶半生…最初の夫IZAMとは"ままごと婚"と揶揄され「宗教2世」も告白

  2. 7

    「誰が殺されてもおかしくない」ICE射殺事件への抗議デモ全米で勃発

  3. 8

    解散総選挙“前哨戦”で自民に暗雲…前橋出直し市長選で支援候補が前職小川晶氏に「ゼロ打ち」大敗の衝撃

  4. 9

    業績悪化で減収減益のニトリ 事業の新たな柱いまだ見いだせず

  5. 10

    チンピラ維新の「国保逃れ」炎上やまず“ウヤムヤ作戦”も頓挫不可避 野党が追及へ手ぐすねで包囲網