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北島純映画評論家

映画評論家。社会構想大学院大学教授。東京大学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹を兼務。政治映画、北欧映画に詳しい。

お盆休みにパリ五輪の余韻を楽しむ映画5作品はコレだ 評論家が厳選

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■100年前のパリ五輪が舞台の感動作「炎のランナー」

 五輪を扱った映画といえば「炎のランナー」(ヒュー・ハドソン監督、1981年)も忘れられない。100年前のパリ五輪が舞台で、当時の開会式の様子が再現されているのも興味深い。ユダヤ系陸上選手エイブラハムス(ベン・クロス)と敬虔なクリスチャンであるエリック・リデル(イアン・チャールソン)ら陸上英国代表選手が差別や宗教的葛藤に直面しながらも金メダルを獲得する姿を描き、アカデミー賞作品賞を受賞。ギリシャ人作曲家バンゲリスがシンセサイザーで手掛けたテーマ曲は誰しもが一度は耳にしたことがある定番で、こちらも作曲賞を受賞している。

 今回のパリ五輪全体の象徴は何といってもエッフェル塔だが、開会式でセリーヌ・ディオンがエディット・ピアフ「愛の讃歌」を熱唱する演出は圧倒的だった。そのエッフェル塔を描いた映画が「エッフェル塔~創造者の愛~」(マルタン・ブルブロン監督、2021年)。1889年パリ万博向けシンボルとしてパリのど真ん中に300メートルの鉄塔を造る案を提案した技師ギュスターブ・エッフェル(ロマン・デュリス)だが、建設反対の猛批判を浴びる。「ノートルダム大聖堂より高いのは侮辱だ」とバチカンが批判するシーンも登場、「いつの時代も……」という既視感を覚える。批判と難工事にもめげずにエッフェルは工事を完成させるが、実は彼には引き裂かれた最愛の人アドリエンヌ(エマ・マッキー)がいた。エッフェル塔のデザインはそのアドリエンヌのイニシャル「A」の形に見える。つまりエッフェル塔自体が壮大な「愛の讃歌」ともいえるわけで、開会式におけるセリーヌ・ディオンの神がかった「愛の讃歌」熱唱はこれからも語り継がれるだろう。

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