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増田俊也小説家

1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。

「時代に挑んだ男」加納典明(35)「奇麗なヌードじゃなく思わずページを閉じちゃうものを撮ってきた」

公開日: 更新日:

 作家・増田俊也氏による新連載スタート。各界レジェンドの生涯を聞きながら一代記を紡ぐ口述クロニクル。第1弾は写真家の加納典明氏です。

  ◇  ◇  ◇ 

増田「先鋭的な写真というと、例えば先ほどの日本刀の写真もそうですよね」

加納「そうだね。あの切っ先の鋭さは恐怖なんだよ。その恐怖をどうやって表現するか。やっぱり視覚的にも感覚的にも『なんだこれ!』というようなものが欲しい。例えば、俺のヌード写真なんかページ開いて『やばいこれ』ってすぐページを閉じちゃうよな」

増田「まわりを意識して閉じてしまうような」

加納「うん。蒼白になって閉じてしまうような。それくらいの写真を撮ろうと、意識してガンガンいった。お上品な奇麗なヌード撮る気はさらさらなかった。その時その時の社会との関係の中で、1枚のスチール写真のメッセージ力で時代に挑戦していきたかった。とにかく俺は言い訳が大嫌いなんだ」

増田「言い訳というと、先ほどもおっしゃっていた映画や小説のごとくということですね。つまりグダグダグダグダと、酔っぱらいのざれ言に聞こえる感じですか?」

加納「まさに酔っぱらいだ。いい加減にしろと思う」

増田「スチール写真で思いきり斬りつけたいと」

加納「映画や小説はさ、恋愛のありようとか、親子関係であるとか、社会状況であるとか、組織の問題であるとか、いろんな問題意識を提示するんだけども『そんなこと俺は知ってるよ』とか『そんなふうに俺は判断しないよ』とか、なんて言うのか、とにかくかったるい。スチール写真1枚の方がシャープだし、斬れ味が違う。自分を表現するのに、自分の鋭利な部分、それをやっぱり感じてほしいし、判断してほしいし」

増田「日本刀でバサッと一発で袈裟斬りにしちゃうような感じですか」

加納「袈裟切りでも円月殺法でもなんでもいいんだけど、やっぱり日本刀で一刀のもとに、一閃するというのかな。目にもとまらない、なんか光が走ったなというぐらいの感じが俺は好きだ。だから動画でアクションやったりチャンバラでやりあったり、恋のトークやったり、そういうのがかったるい。繰り返すけど、俺、表現っていうのは説明はするべきじゃないと思うわけ」

増田「現在取り組んでおられる絵はどうなんでしょうか。Photoshopも使ったデジタルアートの」

加納「絵に関していえば、あれは一番古典的なやり方だ。写真で俺がやってきた鋭さというか、斬れ度というか、そういうものを絵の方にどう持ち込んだらいいかっていうのを、色々考えてる」

増田「それはおおむねできてきたんですか」

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