「時代に挑んだ男」加納典明(35)「奇麗なヌードじゃなく思わずページを閉じちゃうものを撮ってきた」
作家・増田俊也氏による新連載スタート。各界レジェンドの生涯を聞きながら一代記を紡ぐ口述クロニクル。第1弾は写真家の加納典明氏です。
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増田「先鋭的な写真というと、例えば先ほどの日本刀の写真もそうですよね」
加納「そうだね。あの切っ先の鋭さは恐怖なんだよ。その恐怖をどうやって表現するか。やっぱり視覚的にも感覚的にも『なんだこれ!』というようなものが欲しい。例えば、俺のヌード写真なんかページ開いて『やばいこれ』ってすぐページを閉じちゃうよな」
増田「まわりを意識して閉じてしまうような」
加納「うん。蒼白になって閉じてしまうような。それくらいの写真を撮ろうと、意識してガンガンいった。お上品な綺麗なヌード撮る気はさらさらなかった。その時その時の社会との関係の中で、1枚のスチール写真のメッセージ力で時代に挑戦していきたかった。とにかく俺は言い訳が大嫌いなんだ」
増田「言い訳というと、先ほども仰っていた映画や小説のごとくということですね。つまりグダグダグダグダと、酔っ払いの戯れ言に聞こえる感じですか?」
加納「まさに酔っ払いだ。いい加減にしろと思う」
増田「スチール写真で思いきり斬りつけたいと」
加納「映画や小説はさ、恋愛のありようとか、親子関係であるとか、社会状況であるとか、組織の問題であるとか、いろんな問題意識を提示するんだけども『そんなこと俺は知ってるよ』とか『そんな風に俺は判断しないよ』とか、なんて言うのか、とにかくかったるい。スチール写真1枚の方がシャープだし、斬れ味が違う。自分を表現するのに、自分の鋭利な部分、それをやっぱり感じてほしいし、判断してほしいし」
増田「日本刀でバサッと一発で袈裟斬りにしちゃうような感じですか」
加納「袈裟切りでも円月殺法でもなんでもいいんだけど、やっぱり日本刀で一刀のもとに、一閃するというのかな。目にもとまらない、なんか光が走ったなというぐらいの感じが俺は好きだ。だから動画でアクションやったりチャンバラでやりあったり、恋のトークやったり、そういうのがかったるい。繰り返すけど、俺、表現っていうのは説明はするべきじゃないと思うわけ」
増田「現在取り組んでおられる絵はどうなんでしょうか。Photoshopも使ったデジタルアートの」
加納「絵に関していえば、あれは1番古典的なやり方だ。写真で俺がやってきた鋭さというか、斬れ度というか、そういうものを絵の方にどう持ち込んだらいいかっていうのを、色々考えてる」
増田「それは概ねできてきたんですか」