“元祖アイドル球児”太田幸司さんが思い起こす三沢vs松山商…満身創痍だった決勝再試合前夜
太田幸司さん(甲子園の元祖アイドル球児/73歳)
夏の甲子園大会が開幕した。荒木大輔、松坂大輔、斎藤佑樹……。聖地を熱狂させた甲子園アイドルは数多いが、その元祖は間違いなく太田幸司さんだろう。56年前の決勝戦引き分け再試合。青森・三沢高のエースとして1人で計27イニング、384球を投げ抜き、全国の女子中高生に「コーちゃんフィーバー」を巻き起こした。そんな太田さんが自らの現在地、死闘の舞台裏を明かした。
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ボクは今、中学生に野球を教えている。かつて長男、次男も所属した「宝塚シニア」。宝塚市内の自宅から土・日曜日にグラウンドへ行く。熱心なコーチが毎日指導しているから、ボクは要所をみるだけで余計な口出しはしない。子どもたちはみんな純粋で、心が洗われる気分になるよ。
なぜ2日間だけかというと、毎日放送のラジオ解説者の仕事もしているからなんだ。といっても今は阪神ではなくオリックスが中心。ソフトバンク戦の九州放送局送り、日本ハム戦の北海道放送局送りが多い。ほかにパーソナリティーを務める番組で、よしもと芸人たちと阪神の話題を取り上げたりもしている。
「宝塚シニア」には、2年生に中学生離れしたごっつい子がいるんだ。投手としてはものすごい球を放り、打者としては豪快弾を連発する。まさに大谷翔平ばりの二刀流。強豪私学の指導者も多く視察にやってくるから、順調に育てば球界に名をとどろかせる選手になるかもしれないよ。
ボクの夢は、このチームでいい投手を育てることだ。強肩でもコントロールが悪かったボクは、中学1年生まで内外野兼任の野手だった。ある日、野球部の顧問先生に「コウジ、ピッチャーをやれ。ど真ん中めがけて思い切り投げ続けろ」と言われた。地肩が強かったので100球、200球の投げ込みも平気だった。だから肩が強い子には、まず投手をやらせる。体験から学んだ指導法だ。
2009年からは女子プロ野球機構のスーパーバイザーもやったけど、思い入れは今も強い。今月2日に女子高校野球の全国大会決勝戦が甲子園球場で行われた。5年目を迎えた聖地での開催は、ボクが高野連にずっと訴え続けてきたプランだ。女人禁制の方針でもあったのか、最初はけんもほろろでね。でも、ちょうど機構が活動休止となる2021年に実現して報われたよ。女子野球の発展に少しは貢献できたかなと思っている。