最新回の朝ドラ「ばけばけ」ウラの見所~小谷の謡曲が上手すぎるのはなぜだ。勝手な行動、おサワにビシバシ鍛えてもらおう
第10週「トオリ、スガリ。」#50
【朝ドラのツボ!】
トキ(髙石あかり)と小谷(下川恭平)の約束の日が近づいていた。トキのあずかり知らぬところで、小谷の応援をすることになった松野家の面々もソワソワする中、出勤前のトキに小谷は正式にランデブーを申し込む。
そして迎えた当日、小谷がトキを案内したのは怪談の名所であり、トキのよく知る清光院だった。気づけばトキが小谷をリードして清光院でのランデブーが続く中、いよいよ小谷が想いをぶつける。
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【本日のツボ】
小谷が謡い出した謡曲「松風」のクオリティ
※※以下、ネタバレあります※※
小谷とトキのランデブーは、またもやの清光院でした。亡くなった実の父・雨清水傳(堤真一)、元夫・銀二郎(寛一郎)に続き、三度目の来訪。そういえば、傳も「ランデブー」と言って、おトキを誘っていましたっけ。
それにしても小谷、怪談好きのおトキが喜ぶ場所をと、清光院を選んだのはさすがです。松江中生徒の頭の良さが生かされました。実際、おトキのテンションも上がっていましたし。「おる、やっぱりおる。ワッ…」はしゃぐおトキ。…いよいよ、例の松風の井戸の前にやってきます。
「ほんとうに寂しい所ですね」と小谷。「まるで松風の気持ちを表しているかのように…。あっ、あそこで謡曲の『松風』を謡うと、彼女の幽霊が現れるそうでございます」とおトキ。
「では、なして現れるのか。それは、寂しさゆえだと私は思っちょります」と得意げに話します。すると小谷は、井戸のほうへ近づき、「〽松風も村雨も~」と、謡曲『松風』を謡い始めます。
「あの、小谷さん。それ『松風』ですよね? 小谷さん、現われますよ。幽霊出ますよ。小谷さん、小谷さん」と焦るおトキ。
しばらくして、井戸を覗き込み、「やっぱり出ませんでしたね」と小谷。
「すみません。私、無理です。おトキさんが、怪談が好きだと伺ってから私なりに怪談を読んでみたんですが、私にはついていけません。おトキさんには大変申し訳ないですが…時間の無駄です」とまくし立てる。
勝手に振られたおトキ
「なんて言うか……でも……私は、好きだけん。大好きだけん」とおトキ。その言葉に、「ごめんなさい。お気持ちは嬉しいんですが、好きだというお気持ちは嬉しいんですが、ごめんなさい」と頭を下げ、急ぎ早に去って行く小谷。
「あっ。違いちがいますよ。好きだというのは怪談のことであてあなたの事ではないと言うか……」。小谷におトキの言葉は届きませんでした。
なぜか、振られたかたちのおトキ。小谷が一方的に好きになったにも関わらず、です。どの時点で、「やっぱり、無理」となったのか、小谷の心の動きがわからないのと、どうして小谷の上手すぎる謡曲『松風』に疑問が残ります。
小谷が去った後の“風”の音にゾワリ。あきらかに何かがいました。
この間、おトキの不在になにやら物思うヘブン。執筆もあまり捗っていない様子でした。戻ってきていたおトキに、「コタニ タノシイ アリマシタカ?」からと訊ねます。「ノー。ありませんでした。すみません」と言うおトキに、安堵したような……。
そして、「シジミサン!」と呼びかけるも、おトキが近づいてくると「ナンデモナイ、ナンデモナイ」と。「何ですか? 言ってごしなさい?」「キニシナイ」「気になりますけん。えっ? えっ?なんですか?先生」
…そんなやりとりがあり、「フフッ」とひとり笑いし、執筆に戻るヘブン。おトキが襖を閉めたのを振り向いて確認すると、「ハア~」とため息。そして外を見て、少し笑ったような…。
いろいろありましたが、おトキとヘブンの関係は確実に近づいています。週タイトルの「トオリ スガリ。」はヘブンではなく、小谷のことだったようです。ヘブンの「アトヒトツ」が、おトキの大好きな「怪談」ということになるのでしょうか。
それにしても小谷です。勝手に惚れて勝手に振ってなんとも迷惑なヤツです。小谷のような男は、おサワ(円井わん)のような聡明な年上女性にビシビシ鍛えて貰うのがよろしいかと(笑)。来週も楽しみです。
(桧山珠美/TVコラムニスト)


















