著者のコラム一覧
世良康

広島県福山市出身。1948年生まれ。釣り歴40年余りの元日刊ゲンダイ記者。アユ、ヤマメ、磯釣りなどに親しむ。著書に「アユ・ファイター10年戦記」「釣りの名著50冊」「続・釣りの名著50冊」「首都圏日帰り地魚食堂38選」「文人・文士・食通が綴った絶品あゆ料理」(いずれも、つり人社刊)など。

公開日: 更新日:

「第三紀層の魚」田中慎弥著

 小学4年の信道は、学校から帰ると塾通いの同級生たちを尻目に、自転車で赤間関(下関市)のドックへ急ぐ。チヌ(クロダイ)を釣るためだ。

 彼はまだチンチン(チヌの幼魚)しか釣ったことがない。

 父は6年前に亡くなり、母がパートで一家を支えている。釣りは“ひい爺ちゃん”から教わった。

 きょうもドックへ通うが獲物は雑魚ばかり。

 そんなある日、母の仕事の都合で東京へ引っ越すことが決まる。また、寝たきりだったひい爺ちゃんが亡くなって気落ちするが、不思議と涙は出なかった。

 信道は、もうこの海で「チヌを釣るとしたらいまが最後だ」という晩秋の午後、いつものドックで竿を出す。

 すると、長い竿の先が大きく曲がった。渾身の合わせをくれる。

「ゴツゴツゴツという大きな手応え」「経験したことのない重み」「リールはなんとか巻ける」「もうすぐ銀色の体が見えてくる」

 ところが、水中から姿を現したのは……。

 やがて、母子は東京へ引っ越して行く。閉塞感漂う海峡の港町で、大人への階段を上り始める寸前の多感な釣り少年の物語だ。

 (集英社文庫「共喰い」に収録)

【連載】ベテラン釣り記者が厳選!いま読みたい釣りの名著ベスト7+1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「豊臣兄弟!」白石聖が大好評! 2026年の毎週日曜日は永野芽郁にとって“憂鬱の日”に

  2. 2

    川口春奈「食べ方が汚い」問題再燃のお気の毒…直近の動画では少しはマシに?

  3. 3

    あの人「なんか怖い」を回避する柔らかな言葉遣い

  4. 4

    自分探しで“変身”遂げたマリエに報道陣「誰だかわからない」

  5. 5

    (1)高齢者の転倒は要介護のきっかけになりやすい

  1. 6

    2度目の離婚に踏み切った吉川ひなの壮絶半生…最初の夫IZAMとは"ままごと婚"と揶揄され「宗教2世」も告白

  2. 7

    「誰が殺されてもおかしくない」ICE射殺事件への抗議デモ全米で勃発

  3. 8

    解散総選挙“前哨戦”で自民に暗雲…前橋出直し市長選で支援候補が前職小川晶氏に「ゼロ打ち」大敗の衝撃

  4. 9

    業績悪化で減収減益のニトリ 事業の新たな柱いまだ見いだせず

  5. 10

    チンピラ維新の「国保逃れ」炎上やまず“ウヤムヤ作戦”も頓挫不可避 野党が追及へ手ぐすねで包囲網