「豊臣家の包丁人」木下昌輝著

公開日: 更新日:

「豊臣家の包丁人」木下昌輝著

 来年の大河ドラマの主人公・豊臣秀長とその兄秀吉による天下統一を「食」に光を当て描く400ページ超えの歴史エンタメだ。

 豪快で上昇志向の強い兄、藤吉郎に小一郎はほとほと疲れていた。金の工面に始まり、兄が投げ出した清州の台所奉行の名代、妹の婚儀。家族を守ろうとする小一郎は気の休まる間もない。

 そんな中、小一郎と藤吉郎とが大喧嘩をする。藤吉郎が仕掛けようとした調略を小一郎が信長家老の丹羽長秀に知らせ、結果、長秀が加治田城の佐藤を調略したのだ。

 縁を切って4年。そこに現れたのがかつて藤吉郎が雇い入れた京の包丁人、与左だ。与左が作った雉の内臓を味噌で煮たものを、まずかろうと思いつつ小一郎が食すると、驚くほど美味だった。「食えない腑を料理するもしないも味噌次第」という与左の言葉に、小一郎は藤吉郎をうまく世に出すのは自分次第と言われた気がし、兄をもり立てる覚悟を決める。

 やがて与左は兄弟の節目にふらりと姿を見せ料理を振る舞うようになる。泥鰌鍋、即席のかまどでつくるかまぼこ、醍醐……。食で足軽たちをまとめ、一方で敵方を調略した。与左の料理が人を結び、兄弟は天下統一の道を駆け上がっていく。

 与左は実在の包丁人。大坂城で台所頭を務めたという人物だ。物語は秀吉、秀長亡き後も続き、与左が兄弟の思いを料理にし、家康に供する場面が秀逸。食が持つ力の大きさをしみじみ感じる。

(文藝春秋 2200円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    萩本欽一〈34〉私の“運”論 大谷翔平のカネを使い込んだ通訳に「小さな声で『ありがとう』」

  2. 2

    新庄監督の“再就職先”に挙がるまさかの球団 采配に賛否もチームのテコ入れ役にうってつけ

  3. 3

    欧州初の日本人指揮官誕生へ 森保一監督の“再就職先”は「ベルギー1部の日系クラブ」一択か

  4. 4

    中村倫也が「風、薫る」に大貢献…妻・水卜麻美アナとの「ずっと仲良く」「にこやかな」近況

  5. 5

    「恩人だけど、嫌いな人の代表」亡くなった板東英二さんが複雑な感情を抱いたプロデューサーの名前

  1. 6

    神戸への“聖地帰還”めぐり騒然…山口組・司組長「7年ぶりの里帰り」は実現するか

  2. 7

    松本若菜「ジュラシック・ワールド」吹き替え《棒読み》論争再燃…暗雲漂う主演ドラマに新たな逆風

  3. 8

    高市首相のあいさつはコピペ率85%…「広島への思い」石破前首相・愛子内親王とは絶望的格差

  4. 9

    高市官邸「被災地利用PV」が首相の命取りに? 安倍元首相“コロナおこもり動画”の二の舞を自民党が危惧

  5. 10

    日本ハム大ショック! “見限った”上沢直之が天敵に、呼び戻した有原航平が足枷となる皮肉