「モナ・リザ」「叫び」など10カ国10の美術盗難事件 「美術館強盗事件簿」フィリップ・デュラン著、神田順子、田辺希久子訳

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「美術館強盗事件簿」フィリップ・デュラン著、神田順子、田辺希久子訳

 美術品泥棒というと、映画「おしゃれ泥棒」「ヘッドハンター」「エントラップメント」、あるいは青池保子の漫画「エロイカより愛をこめて」などで描かれているように、華麗で知的なイメージが浮かぶ。しかし、FBIで長年美術品盗難捜査に関わってきた元捜査員は、実際の泥棒たちは芸術への愛や知能犯とは無縁で、そこにあるのは「臆面もない金銭欲」だという。

 本書は、1911年のフランス・ルーブル美術館の「モナ・リザ」盗難から、2015年のイタリア・カステルベッキオ美術館のティントレットなど17点の絵画盗難まで、10カ国10の美術盗難事件を扱ったもの。

「モナ・リザ」の盗難は犯人として詩人のアポリネールが誤認逮捕されたことで有名だが、実際の犯人はルーブルの作業員で、盗難から2年後に逮捕された。61年のロンドン・ナショナルギャラリーのゴヤが描いた「ウェリントン公爵の肖像」も大きな話題となった。絵が戻ってきたのは65年だが、62年に公開された映画「ドクター・ノオ 007は殺しの番号」にはドクター・ノオの書斎にくだんの絵が飾られている場面が登場する(20年の映画「ゴヤの名画と優しい泥棒」もこの事件がモデル)。

 そのほか、セントルイスパークの画廊のローマン・ロックウェルの原画7点ほか、東独ゴータ市のフリーデンシュタイン城のヴァン・ダイクほか5点、オスロ国立美術館のムンクの「叫び」、ストックホルム国立美術館のルノワールなど、各盗難事件の発生から終結までの経緯をできるだけ正確に描いていく。美術品盗難がほかの犯罪と異なるところは、絵の盗難は比較的容易だが、それを売りさばくことはかなり難しいこと。本書の事件でも多くの犯人が売りさばく段階で逮捕されている。にもかかわらず、現在も毎年40億~50億ドルもの美術品盗難が起きているという。ちなみに、世界でもっとも盗難被害に遭っているのはゴッホの絵だそうだ。 〈狸〉

(草思社 2860円)

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