「本屋 イトマイ」(板橋・ときわ台)知らなかった本との出合いがぐんと高まる本屋さん

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 ゆるくカーブした階段を上がるときから予感はしたが、扉を開けると、こんなにもすてきな空間が広がっていたとは。向かって左に、アンティークなカフェスペース。右に色目美しい書店スペース。合計24坪ほど。おお! と心の中で感嘆の声を上げる。

「影響を受けたのは、下北沢の『B&B』と初台の『fuzkue』、高円寺の『アール座読書館』です」と店主の鈴木永一さん。多方面へのアンテナと静かな読書空間。その3軒のいいとこ取りだ、きっと。しかも、アート的な下地があったに違いないと思いきや、やはり。

「前職? 週刊誌の広告デザインの仕事をしていました。現代美術の作品制作をしながら。ところが、現代美術よりももっと好きなものができてしまって」

 保坂和志の小説にハマり、現代小説に描かれる世界に魅了されるように。内沼晋太郎さんの「これからの本屋講座」を受けたのが2019年の独立開業につながったとのこと。

 カフェスペースに置かれた白い本棚を開けると、「生きる歓び」「猫の散歩道」など保坂和志をはじめ、綿矢りさ、町田康、川上弘美、それに古井由吉、安部公房……。机に並んだものを含め、推定約300冊の古本は、鈴木さんの蔵書の「10分の1くらい」を自宅から持ってきているそう。実は、手作りのプリンやチーズケーキが大人気。申し分のない読書空間だ。

色鉛筆のケースを開けたような鮮やかな色別棚

 さて、右手がまたまたスゴい。手前の平台こそ、文芸新刊が多いが、一歩進むと、色鉛筆のケースの蓋を開けたような感じになった。棚が、水色、ピンク、緑、黄色など11の色別なのだ。たとえば緑の棚には「あつあつを召し上がれ」「訂正可能性の哲学」「ドラえもん」、黒色の棚には「仮面考」「シンギュラリティはより近く」が隣り合うといった具合。文芸も哲学も漫画もノンフィクションも、ジャンルなどお構いなし。

「今年の1月からです。元から(オールジャンルの)町の本屋の機能を持たせたかったんですね。本を色で分けるの、面白いんじゃないかと」

 戸惑いは絶対ある。でも、リアル本屋の長所である「知らなかった本との出合い」の率がぐんと高まる。いやはや面白い勝負に出たのだ。「色別棚にしてから? 売り上げ、下がってないんですよ」と鈴木さん。

 新刊の在庫は4000冊。読書会などイベント多し。マッチングを意識し、恋愛小説を扱う読書会も開催しているという。

ウチの推し本

「鉄の胡蝶は」保坂和志著

「私が保坂和志を好きになった理由? “小説の自由”をすごく感じたことが一因だと思いますが、言葉でうまく表現できなくてすみません。この本は、4月13日に発売されたばかり。保坂さんの13年ぶりの待望の長編小説です。今、読んでいる途中ですが、最初の数行でもう心を奪われてしまいました」

 案内に「〈21世紀のカフカ〉が贈る、果てしなき物語」とある。

(講談社 2640円)

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