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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

わからないことを受け入れる「ネガティブ・ケイパビリティー」こそが大切

公開日: 更新日:

 マスクの効果についての最も妥当性が高いと考えられる研究結果からわかったことは、「どうすればよいか、はっきりとはわからない」ということである。マスクの着用が有効だとしても、集団と個人に対しては同じように効果があるとは言えない。そういうと多くの読者は、そんな結論であれば読む必要がなかったとがっかりするかもしれない。しかし、マスクは有効、マスクは無効というはっきりした判断こそ問題であることを指摘したい。

■結論より思考を重視せよ

 判断を保留して、あなた自身で、もう一度よく考えてみてはどうか、というのが本連載の主張である。こうした主張はなかなか理解されがたいのではないかと思っていたのだが、案外、何もとっぴなことではないらしい。「ネガティブ・ケイパビリティー」という言葉をときどき耳にするようになったが、これは私の主張そのものである。

 このネガティブ・ケイパビリティーについて簡単に説明しよう。もともとはイギリスの詩人キーツが兄弟にあてた手紙に使われた言葉である。「事実や理由をせっかちに求めず、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいられる能力」のことを意味し、シェークスピアはその能力を持っていたという。ヒトの脳は物事を理解しようとする傾向にあるが、性急に結論を求めず、わからないものはわからないとして中ぶらりんの状態を受け入れる。これこそがネガティブ・ケイパビリティーである。まさに本連載で目指していることそのものである。

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