ヘルペスウイルスが認知症の原因になる? 治療で17%リスク低下
認知症の原因は正確には不明ですが、ウイルス感染が認知症の起こるきっかけになっているというのは、10年以上前から提唱されている仮説です。認知症の代表であるアルツハイマー型認知症では、アミロイドβという種類の異常タンパクが脳にたまりますが、このアミロイドβは、ウイルス感染を治すために産生されているもので、その歯止めが利かなくなることで、認知症が起こるのではないか、という考え方です。
これが事実であるとすると、どのようなウイルス感染が、その原因として考えられるのでしょうか? 今年のイギリスの医学誌に、単純ヘルペスウイルス1型の感染と、アルツハイマー型認知症との関係を調べた論文が掲載されています。
単純ヘルペスウイルス1型というのは、「熱の華」と通称される、口の周りに痛みを伴う水ぶくれを起こすウイルスですが、アメリカで調査したところ、このウイルスの感染はその後のアルツハイマー型認知症のリスクを1.8倍も増加させていることが明らかとなったのです。
さらに注目すべきことには、この感染症を抗ウイルス剤で治療すると、しない場合と比較して、アルツハイマー型認知症のリスクが17%低下していたのです。これはまだ仮説ですが、今後、ウイルス感染の予防や治療が、認知症の予防として活用されるようになるかもしれません。