海も山も! 熊本で日本一の絶景を楽しむ人気観光列車の旅

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 九州は観光列車が数多く走っているエリアだ。海沿いを駆ける列車もあれば、山あいを抜けていく列車もある。車両のデザインも車窓からの風景もさまざま。のんびりと極上の時間を過ごせる。

 まずは昔懐かしのSL旅だ。営業路線上で営業運行している蒸気機関車としては日本最古、熊本駅―人吉駅の球磨川沿いを走る「SL人吉」は、1922(大正11)年に製造された「ハチロク」(8620形蒸気機関車)の車両を使用している。

 いったん廃車となって展示されていたが、88(昭和63)年に大規模修繕し運行を再開。2005年に不具合が発生して2度目の引退に追い込まれたものの、07年に見つかった開発当時の図面を基に4億円をかけて修復、09年から再び運行を始めた。

 スリムなボディーに、むき出しの動輪が美しい足回り。走りはスムーズで力強い。それでいて時折、吐き出される煙と「ぶぉ~」という汽笛が哀愁を誘う。

 客車は木の温もりを生かした設計。1号車と3号車にはフリースペースの展望ラウンジが併設されていて、雄大な球磨川の絶景をパノラマビューで楽しむことができる。

 2号車のビュッフェでは熊本県産黒毛和牛「和王」を使ったハンバーグが人気の「86弁当」や地ビールを販売。ゲン担ぎに入場券を買う人が多い「一勝地」駅など途中の停車駅でちょっとした観光も楽しみながら、グラスを重ねよう。

 11月4日までの金土日を中心に1日1往復運行している

 明治の新政府で鉄道建設にかかわった山縣伊三郎と後藤新平からその名がつけられた特急「いさぶろう・しんぺい」は、熊本―宮崎―鹿児島を結ぶ山あいを駆け抜ける。

 山肌をループ状にぐるりと一周したり、スイッチバックで前進後進を繰り返したりすることで、急峻な坂も攻略。平野部を走る通勤列車では体験できない鉄路の醍醐味に触れられる。

 ハイライトは真幸駅と矢岳駅の間にある「矢岳越え」の絶景スポットだ。えびの盆地と霧島連山のパノラマ、天気が良ければ桜島も遠くに望む。秋から冬にかけての早朝は雲海も発生するそうだ。「日本一」と称される車窓の風景である。

 真幸駅は「真の幸せがある」と人気で、ホームに設置された鐘を3回鳴らせば、いっぱいの幸せを得られるとか。矢岳駅のSL館には「デゴイチ(D51)」が展示されている。

地元産食材の本格フレンチ

 途中停車する大畑駅では旧保線詰め所をリノベーションしたレストラン「囲炉裏キュイジーヌLOOP」(℡0966・23・1003)が昨年9月にオープンした。

 秘境駅で食べられる本格フレンチ。中務雅章シェフは、フランスや東京・銀座で修業後、故郷に戻って店を開いた。優しい味わいのうまい料理を作る。「熊本はおいしい食材がたくさんあります。その素材の良さを分かっていただければうれしい」と言う。

 野菜のパフェはマリネやムースに形を変えた野菜が何層にも重なり、見た目からして美しい。もち麦をアクセントに加えたサラダは4種類のドレッシングで楽しむ。球磨地方の郷土料理「つぼん汁」をミネストローネ風にアレンジした「ループ風」は、どんこと昆布のダシに鶏肉を加え、川でとれる青のりで香りをプラス。

 メインの「和王」と「球磨の黒豚」は炭火でじっくり焼き上げる。牛肉はしいたけと醤油のソース、豚肉はトマトとマスタードのソースでいただく。いずれもハイレベルで、しみじみとおいしい。営業はランチ(11時半~15時)とカフェ(14~17時)のみだ。

 

「いだてん」に沸く県北エリア

 大河ドラマ「いだてん」の主人公のひとり、金栗四三は熊本県の春富村(現・和水町)生まれ。生家は「金栗四三生家記念館」になっていて見学も可能。近くの「金栗四三ミュージアム」では、日本人で初めて五輪に出場した1912年のストックホルム大会で実際に着用したユニホームが展示されている。

 晩年を過ごした玉名市では「いだてん大河ドラマ館」もオープン中だ。同市を含む県北エリアには良質の温泉が多い。山鹿市にある「山鹿温泉元湯さくら湯」は、もともと初代藩主の細川忠利が参勤交代で使う「御茶屋」だった。明治期に市民温泉となり、再開発でビルとなったこともあったが、2012年に再生した。

 和紙とノリだけで作る伝統工芸品を展示する「山鹿灯籠民芸館」、明治時代に建造された芝居小屋「八千代座」も見応えがある。

(取材・文=二口隆光/日刊ゲンダイ)

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