下関マグロが選ぶ「令和に残したいレジェンド町中華」20店

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「今から20年くらい前、牛丼が290円になったとき、負けてられないと自分のまかないを『酔来丼』として出したのが始まりです」

「酔来軒」3代目店主の野木発成さんは話す。横浜市営地下鉄阪東橋駅から徒歩8分ほど、「横浜橋商店街」を抜けた大通り沿いに店はある。駅からは遠く、決していい場所とは言えない。町中華探検隊の下関マグロ氏はこう話す。

「町中華には、ラーメン、ギョーザといった中華料理以外に、カツ丼やカレーライス、オムライスを出す店が多いのですが、店名を冠した“店名丼”を出す店も多いんです。その中でもこれは最高峰だと思います」

 下関マグロ氏が「町中華探検隊」をライターの北尾トロ氏と結成したのは2014年。「町中華」とは、そのほとんどが個人経営で、昭和のにおいがする庶民的な中華料理店を指す。店主の高齢化や町の再開発などによって減少の一途をたどっているが、その町に根ざして頑張っている店もたくさんある。「酔来軒」もそんな店のひとつだ。

横浜名物・不思議なウマさの「酔来丼」

「『酔来丼』のレシピは、チャーシュー、メンマ、味付けもやし、刻みねぎ、それに中華鍋で焼いたフライドエッグのような目玉焼きといったオーソドックスなものです。これにしょうゆダレ、ゴマ油、洋ガラシの入ったタレをかけて食べるんです」(マグロ氏)

 確かに一見、ラーメンの具ののったご飯にしか見えない。しかし店主のススメで、タレをかけてよく混ぜて口にすると、独特のうま味が口の中いっぱいに広がる。ビビンバ、生チャーハン、ゴマ油をかけた卵かけご飯……どれとも違う。このうまさは何と表現したらいいのか。マグロ氏も笑う。

「不思議な味でしょ? 一つ一つの具材はどれも知っているはずなのに、混ぜることで劇的にうまくなる。でも、味は一言で表現できない。まさにライター泣かせと言うか“言葉にならない”うまさなんですよ(笑い)。それにこのボリュームで税込み400円というのもすごいでしょ。価格は20年間据え置きだそうです」

 店主の野木さんによれば、昼時や土日などは行列ができ、お客さんの8割が「酔来丼」を注文するという。平日で1日100~200食。最高で400食出したこともあったそうだ。

「一度来たお客さんが、知り合いや家族を連れて来ることも多いんです。みなさん『酔来丼』を出すと、最初は“ふーん、ラーメンの具がのってる丼かあ”というつまらなそうな表情をされるんですが、口にすると、“オッ!! これはおいしいゾ”と顔が変わる。それが面白くてね」(野木さん)

 さらに丼モノやお酒を注文した客には、「小ラーメン」「小ワンタン」「小チャーハン」が200円で提供されるのもうれしい。

 取材の最中にも、午後3時ごろだというのに、作業服姿のグループや近所のオバちゃんや学生がひっきりなしに訪れて、酔来丼やカレーライスをパパッと食べて満足げに出ていく。確かに会社の近くにこういう店があったら、毎日のように通ってしまいそうだ。

「町中華は“特別ではないけど大切なもの”なんです。誰もが何軒かはそういう店を知っているはずです。令和の時代にも、こんな店がひとつでも多く残るといいですね」(マグロ氏)

「酔来丼」はまさに“レジェンド町中華”の味わいだった。

▽酔来軒 すいらいけん
(住)神奈川県横浜市南区真金町1―1
(営)11:00~21:00
(休)月・火(不定休)
℡045・231・6539

こちらも必食! 町中華「黄金の3品」

一寸亭

 町中華を味わうなら、ぜひともその店のチャーハンを味わいたい。ここは他のメニューもうまいが、特にチャーハンが絶品。チャーハン(750円)、五目チャーハン(950円)、カニチャーハン(1000円)。「ポイントはナルトだと思います。調味料は控えめで、ナルトとチャーシューのうま味で、最後の一口まで飽きずに食べられます」(マグロ氏)

▽ちょっとてい
(住)台東区谷中3―11―7
(営)11:30~21:00LO
(休)火 ℡03・3823・7990

餃子の店 おけ以

「人のいい店主で、気さくにレシピを教えてくれるんですが、真似できそうでできない。豚のバラ肉をペースト状になるまでこねて、一晩寝かしてから白菜とニラをあわせ、皮に包んで冷凍……と、口に入るまで3日くらいかかっています」(マグロ氏)。羽根付きで皮はサクッと、口の中で噛むと、中の具材の味がハッキリ分かる。誰もがおいしいと思えるギョーザだ(620円)。

▽ぎょうざのみせ おけい
(住)千代田区富士見2―12―16 富士見フラワーハイホーム
(営)11:30~13:50LO、17:00~20:40LO
(休)日・祝・第3月 ℡03・3261・3930

萬福

 大正時代に屋台を引いていた初代から引き継がれている中華そば(700円)。ナルト、シナチク、チャーシュー、薄焼きの卵がのっているのも当時のまま。「味はオーソドックスな鶏ガラスープですが、これが香りもよくてまたうまい。具材をどの順番で食べようか悩みますね。ギョーザもおいしいので、ラーメン+ギョーザ+ビールの“三種の神器”をぜひ」(マグロ氏)

▽まんぷく
(住)中央区銀座2―13―13
(営)11:00~15:30、17:00~22:30LO
(休)日・祝日の月
℡03・3541・7210

(取材・文=平川隆一/日刊ゲンダイ)

▽しものせき・まぐろ 
1958年、山口県下関市生まれ。出版社勤務を経てフリーに。「お散歩ライター」として2014年から町中華探検隊の活動を始める。CSテレビ朝日チャンネル2「ぶらぶら町中華」に北尾トロと出演中。町中華探検隊名義で「散歩の達人」のWEBサイト「さんたつ」で「町中華探検隊がゆく!」も連載中。最新刊に「ぶらナポ 究極のナポリタンを求めて」(駒草出版)がある。

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