3月末から5倍増…新電力「2割が倒産・廃業」で加速する家計負担増 大手も値上げで逃げ場なし
新電力会社の苦境が続いている。帝国データバンク(TDB)が5日公表した調査によると、昨年4月までに登録のあった新電力706社のうち、約2割を占める146社が倒産や廃業、契約停止などに追い込まれたという(11月28日時点)。3月末時点の31社から、約8カ月間で5倍近くに膨れ上がった。
2016年の電力自由化以降、自前の電源を持たない新電力会社は電力調達を卸売市場に依存してきた。燃料高や電力不足により調達コストが急増。新電力は従来の電気料金プランに比べ5~15%割安だといわれているが、TDBの試算によれば、今年8月の新電力における電力販売価格平均は前年同月比50%も上昇したという。TDB情報統括部の瓦田真人氏がこう解説する。
「調達価格の上昇分を販売価格に転嫁する動きが続いている一方、調達コストの高騰に価格転嫁が追いついていないのが実情です。販売価格から調達価格を引いた8月の利益は、1メガワット時当たり183円。前年同月比98%減です。7月は461円の赤字でした。人件費や送配電コストなどを引いたら、ほとんど利益は上がらず、売れば売るほど赤字が出てしまう『逆ざや』状態にいつ陥っても不思議ではありません。かといって、値上げを続ければ、いわゆる旧電力の方が安い事態にもなりかねず、顧客離れが進む恐れがあります。採算を見込めない以上、撤退を余儀なくされる新電力会社が増えているのです」