省エネ建築が義務になる「住宅の2025問題」…新築でなくても断熱改修は早めがお得?
2025年に改正建築物省エネ法が施行される。新築の建物に対して断熱や冷暖房費削減の省エネ適合基準が一律に義務化されるのだ。それを見据え、自治体では太陽光パネル設置や断熱対策など省エネ住宅化を先取りした動きが活発化している。
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2050年のカーボンニュートラルのタイムリミットに向けて、温室効果ガスを排出せず、電気をできるだけ“買わない”活動が世界中で求められるようになっている。なかでも住宅の省エネ化は大きな課題だ。
東京都によれば、都が排出する二酸化炭素の約30%は住宅由来とされる。政府の改正建築物省エネ法は住宅業界にインパクトを与えた。公共政策に詳しい千葉商科大学の田中信一郎准教授は次のように話す。
「行政が省エネ住宅を義務化するのは現実的なレベルになったからです。大手ハウスメーカーはすでに国の基準を満たしているし、電気代が上昇する一方で、太陽光パネルは年々安くなっています。長野県では新築住宅について太陽光パネル設置を含めた省エネ住宅にするかどうか検討することが義務付けられています。検討した結果、多くの建築主が省エネ住宅を選ぶそうです。検討すれば省エネ住宅は経済的に得だとわかるからです。欧州で太陽光パネルが普及しているのも得をするからです」
長野県では建築物省エネ法を先取りした基準の長野県地球温暖化対策条例(改正)を来年4月から施行する。
また、鳥取県では「とっとり健康省エネ住宅」(NE-ST=NEXT STANDARD)を掲げ、国の省エネ基準に気密性も加えた性能基準を定める。隙間の多い家では空気の入れ替えが難しいため、気密性は重要な指標だからだ。
県は一定の基準による高断熱・高気密の住宅にすることで、冷暖房の工事費用も回収されると試算。自治体にとってエネルギー政策は移住を考える要素のひとつにもなりつつあるようだ。