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田中幾太郎ジャーナリスト

1958年、東京都生まれ。「週刊現代」記者を経てフリー。医療問題企業経営などにつ いて月刊誌や日刊ゲンダイに執筆。著書に「慶應幼稚舎の秘密」(ベスト新書)、 「慶應三田会の人脈と実力」(宝島新書)「三菱財閥 最強の秘密」(同)など。 日刊ゲンダイDIGITALで連載「名門校のトリビア」を書籍化した「名門校の真実」が好評発売中。

日大、慶応、東海、東邦…大学付属小から医学部までエスカレーター式で進むならどこ?

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「小学校から医学部への道筋をつけようと画策したものの、うまくいかなかった」と振り返るのは神奈川県の開業医。なるべく早く息子の医学部進学を確実にしようといろいろ調べた。医学部を持つ首都圏の私大で、内部進学の可能性のある付属校を擁するのは慶応、日大、東海、東邦、帝京など。うち、小学校まであるのは東邦を除く4校。

「東海大の付属小は静岡市なのでアクセスを考え除外。医学部まで上がれる可能性が最も高いのは慶応幼稚舎ですが、あまりにハードルが高い」

 この開業医の長男は10年近く前に幼稚舎を受験。残念ながら合格できなかった。もうひとつ、考えたのは日大付属小への進学。

「そのまま高校まで上がったとしても、医学部への内部進学の確率が想像以上に低く、期待できそうにない」と断念した。日大医学部の内部進学枠は10人。日大系列の高校は全国で26校もあり、その中の成績上位者で分け合う形なので、「先が見通せない」のだ。昨年度、首都圏の系列高10校から医学部に内部進学できたのは合計でわずか2人だった。

「かつてはもっと多かったのですが、2000年代後半に入り、急激に減った」と話すのは事情を知る日大医学部元教授だ。「不正の温床になりがちな医学部への内部進学に対しては文部科学省の監視の目も厳しくなっていた」と内情を明かすが、別の理由もあった。

「研修医制度が大きく変わり、大学病院で自大学出身の医師を確保するのが難しくなり、日大病院でも医師不足が深刻化。内部進学で入ってくるのは開業医を目指す層が多く、一般入試で勤務医志向の学生を確保する必要があったのです」

■正攻法で立ち向かうのが得策なのか

 学内で絶対的な力を持つ田中英寿氏が08年に理事長に就任すると、日大病院の立て直しに乗り出す。関連病院に派遣していた医師を次々に引き揚げ、日大病院に戻した。系列高からの内部進学もさらに減らした。こうした動きは、医師の確保に苦しむ他大学にも広がっていった。

 前出の開業医は内部進学を狙う方針を百八十度転換。「息子を医学部に入れるには正面を切って立ち向かうのが得策だと気づいた」と話す。

 医学部に強い中高一貫校を目指すのが一番の近道という結論に行き着いた開業医は、そのための準備をさっそく始めた。小学校3年の3学期になるとサピックスに通わせ始め、家庭教師もつけた。入試では併願可能な神奈川県と都内の難関校5校を受けた。複数に合格し、近年躍進している中学に入学した。

「息子は今春、高校に上がりましたが、模試では国公立大医学部も合格圏に入ってきています。私大なら確実なところはいくつもあり、医学部に入る目的はほぼ達成できそう。内部進学とか姑息な手段ばかり追っていた自身が恥ずかしくなります」と開業医は顔をほころばせる。今や、医学部受験にウルトラCはないと思ったほうがよさそうだ。



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