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田中幾太郎ジャーナリスト

1958年、東京都生まれ。「週刊現代」記者を経てフリー。医療問題企業経営などにつ いて月刊誌や日刊ゲンダイに執筆。著書に「慶應幼稚舎の秘密」(ベスト新書)、 「慶應三田会の人脈と実力」(宝島新書)「三菱財閥 最強の秘密」(同)など。 日刊ゲンダイDIGITALで連載「名門校のトリビア」を書籍化した「名門校の真実」が好評発売中。

慶応大にエスカレーター式で進める幼稚舎「医学部クラス」の特色

公開日: 更新日:

「小学校から内部進学で、エスカレーター式にトップクラスの医学部に入学できる可能性があるのは、慶応幼稚舎だけ」と話すのは幼児教室の経営者。

「同級生で医学部に進んだ中には幼稚舎出身が2人いた」と振り返るのは慶応大医学部元教授だ。自身は男子校の義塾高校(通称「塾高」)から慶応に入り、1970年代後半に医学部に内部進学した。

「僕らの学年で医学部に進んだ幼稚舎組は、例年より少なかったほうだと思う。同僚の中には、幼稚舎からずっと慶応という教授がけっこういた。僕と同級だった2人は、いずれも著名な開業医の息子で、塾高の中では育ちの良さが際立っていた」

 この元教授より3歳下で、80年代初頭に志木高から慶応大医学部に進み、同大元講師や他大学の教授を務めた医師は、同学年に幼稚舎出身者が6人いたと証言する。当時はまだ湘南藤沢高やニューヨーク学院はなく、慶応の付属高は塾高、志木高、女子高だけだった。

「この3校から医学部に内部進学したのは入学者の4割近くの約40人。そのうちの6人が幼稚舎生ですから、かなりの確率です。こちらも内部進学ながら、小学校からレールに乗るなんて、ちょっとズルイなと思ったことを覚えています」

■現在も入学者の4割が内部進学

 現在は慶応大医学部(1学年110人)への内部進学枠は塾高22人、志木高7人、湘南藤沢高7人、女子高5人、ニューヨーク学院2人。昔と同様、医学部入学者の約4割を内部進学が占めていることになる。では、そのうち幼稚舎出身者はどれくらいいるのだろうか。

「年によってバラバラです。幼稚舎は出来る子と出来ない子の差が激しい。塾高でトップになるのも留年するのも幼稚舎生」と話すのは内部事情にくわしい幼稚舎関係者。「ただ、慶応大医学部を目指すなら有利なのは確か」だという。その理由として挙げるのは医学部クラスの存在。幼稚舎にはK、E、I、Oの4クラス(各組男子24人、女子12人)がある。6年間クラス替えがなく、担任もそのまま持ち上がっていく。この中でかつて医学部クラスと呼ばれていたのがO組だ。

■系列校の成績上位者を輩出

「開業医の子弟を中心に集められ、医学部への内部進学や受験を意識した授業が行われていた」と関係者は話す。その特色も近年はだいぶ薄れているものの、塾高や女子高で成績上位にくる幼稚舎生はO組出身が多く、その中から医学部への内部進学を勝ち取る流れが今も残っているという。

 いずれにしても、内部進学枠が最も多い塾高に進んだとしても、1学年の生徒数は750人前後もいるのだ。そこからふるいにかけられることを考えると、そう簡単な話ではない。

「ましてや、幼稚舎に合格すること自体、至難の業。東大理Ⅲより険しいとも称されるお受験最難関」(幼児教室経営者)をクリアしなければならないとなると、気が遠くなってくる。



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