著者のコラム一覧
田中幾太郎ジャーナリスト

1958年、東京都生まれ。「週刊現代」記者を経てフリー。医療問題企業経営などにつ いて月刊誌や日刊ゲンダイに執筆。著書に「慶應幼稚舎の秘密」(ベスト新書)、 「慶應三田会の人脈と実力」(宝島新書)「三菱財閥 最強の秘密」(同)など。 日刊ゲンダイDIGITALで連載「名門校のトリビア」を書籍化した「名門校の真実」が好評発売中。

“金権小学校”のレッテルが貼られた早稲田実業初等部は幼稚舎を際立たせる「かませ犬」か

公開日: 更新日:

「慶応幼稚舎に追いつくなんて永遠にありそうもない」と悔しそうに語るのは早稲田大の元教授。早大系列唯一の小学校として早稲田実業に初等部が発足したのは02年のことだ。この元教授も創設にかかわっていた。「幼稚舎のような名門小学校を早稲田にも」というのが当初のもくろみだった。だが、幼稚舎関係者は「それほど脅威には感じなかった」と当時を振り返る。

「いくら早稲田でも、明治初期にできた幼稚舎の伝統の重みにかなうはずもない。むしろ、あちらが小学校経営に乗り出すことで、慶応のアドバンテージがより際立つ」

 幼稚舎関係者は高をくくっていたと本音を明かす。「やはり幼稚舎は別格。早実は現在までその差をまったく縮められていない」と幼児教室経営者は話す。

 そもそも、早実初等部は出だしからつまずいた。最初の入試である02年度の募集要項には「1口10万円で5口以上の寄付をお願いします」と記されていた。ところが、2次試験の面接の際、学校側は保護者たちに30口300万円の寄付を要請したのだ。これを耳にした時、前出の元教授は「さすがにまずいだろう」と感じたという。

 合否がまだ決まる前にこうした要請をされたら、保護者たちはそれが入学条件なのかと思ってしまう。面接官を務めたのは当時の早大総長で早実の理事長を兼任していた奥島孝康氏だった。文部科学省関連の役職にいくつも就いていた教育界の重鎮である。

■保護者に寄付金350万円を求めて東京都が補助金カット

 03年度入試ではさらに寄付金を350万円に増額。東京都から改めるように指導を受けたが、早実側はそれを無視。翌年も同額の寄付金を保護者に求めたため、怒った都は補助金の20%にあたる約1億2000万円の交付を取り消した。以降、大っぴらに高額な寄付金を徴収することはなくなったが、いったん貼られた「金権小学校」のレッテルはいつまでもついてまわった。

「カネ儲けのために初等部をつくったと思われても仕方なかった。早実ばかりか早稲田全体のイメージまで損なった。幼稚舎の背中を追うどころではなくなった」(元教授)

 幼稚舎の場合は入学後に教育振興資金(3万円2口以上)や慶応義塾債(10万円3口以上)などの寄付が求められるが、それほど高額ではない。

「現在、創立150周年記念事業として、在校生の保護者や卒業生から寄付を広く募っています。ただし、OB・OGであっても受験者の保護者は寄付できないことになっている。入試の公平性を保つためです」(前出の幼稚舎関係者)

 早実初等部のずさんさばかりが目立つが、ライバルであることには変わりがない。今後、2校の関係者たちを大いに沸かせそうなのがプロ野球のソフトバンク対日本ハム戦だ。日ハムの清宮幸太郎は早実初等部初のプロ野球選手。今年ソフトバンクからドラフト3位指名を受けた広瀬隆太も幼稚舎初のプロ。伝統の一戦になれば楽しみだ。



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