文科省は「博士」増加対策へ 高学歴ワーキングプアはそれで本当に解消できるのか?

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博士が活躍できる場はさらに少なくなる

 文部科学省科学技術・学術政策研究所の2020年調査では、博士課程修了者の67%が「正社員・正職員」になるが、29%は「契約社員、任期制研究員」「パートタイム労働者」「派遣労働者」といった非正規雇用であった。非正規雇用の比重は高い。
 
 このような状況が好転することが、博士課程志望者の増加につながる第1条件であろう。文部科学省の「博士人材活躍プラン」では、2040年に人口100万人当たりの博士号取得者数を2020年度の約3倍にする目標を提示している。

 それは可能だろうか。はっきりいって難しいのではないかーー。

 第1に、博士の希望職種としてあげられる大学教員がこれから増えそうにないからだ。18歳人口の減少で今や私立大学の半数が定員割れという状況で、私立大学の多くは正規の大学教員を増やせる経営事情にない。国立大学も運営費交付金の伸び悩みで、経済的余裕はないという声が出ている。教員採用は任期付きのポスドク(博士研究員)がせいぜいであろう。博士の主な受け入れ先であった大学教員の正規のポストはますます減少していくだろう。

 第2に、博士のメインの就職先であった大学など研究職の職場環境の問題もある。大学や研究機関における不当な権力や無視などアカハラ(アカデミックハラスメント)の実態が広く知られるようになった。働き方改革がよる改善も、民間企業より進んでいないという指摘もある。博士の就職先である主な大学や研究所などが働きやすい魅力ある職場になる展望もあまりないようだ。

 第3に、今でも有名大学の工学系学部卒業生のかなりが大学院修士課程(博士前期)に進学している。民間大手企業でも技術の高度化が進み、工学修士が技術者のメインルートになりつつある。しかし、博士課程(博士後期)への進学率は工学系が意外と低い。博士では研究テーマの専門性が強まりすぎて、メーカーなどへの就職を考えればむしろ修士修了レベルが現実的という声もある。

 といっても、博士はグローバルスタンダードになりつつある。工学系だけでな、理学系でも数学分野などAIなどの情報分野では高度の知識が求められ、博士の活躍の余地が広がっていることは確かだろう。

教育ジャーナリスト・木村誠)

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