意外とかわいい? 山形サクランボ凶作で規格外の「双子果」に活路
「赤い宝石」の一大産地が歴史的な凶作だ。山形県によると、今年の県内のサクランボ収穫量が平年(1万3300トン)比65%の8700トンだったという。8000トン台になるのは30年ぶりで、平成以降では2番目に少ない。
今年は6月中旬以降に真夏日が続き、実が熟しすぎてしまう高温障害が増えた。また、昨夏の高温の影響を受け、実がくっついてしまう「双子果」のサクランボが多発した。
「双子果」のサクランボはいびつな形から規格外品とされており、これまでは廃棄されてきた。しかし、味そのものに問題はないため、今年は少しでも県内生産者の収入を確保しようと、特例で出荷された。山形県の吉村美栄子知事は、6月6日の定例会見で「大変かわいらしい。消費者の皆さんに応援してもらい、楽しんでいただければ」と宣伝。県を挙げて、「双子果」の出荷に取り組んだ。
「訳あり品」として店頭に並べたところ、安くてお得なため人気を集め、SNS上では「見た目がかわいい」といった声もあった。意外な反響について、県内の農協関係者はこう話す。
「規格外品でも、いざ販売してみれば消費者は思いのほか受け入れてくれました。多くのメディアに取り上げてもらったし、多少は生産者の収入につながった。もちろん規格外品が出ないことが一番ですが、他の農作物でもこうした思わぬ販路が見つかるかもしれないと気付かされました」
地元は複雑な葛藤も
とはいえ、葛藤もある。別の農協関係者はこう言う。
「県内では長い間、サクランボのブランド力向上に取り組んできました。凶作だからしょうがないとはいえ、形が不揃いのものを出荷してしまうのは、これまでと逆行してしまうのではないかとも思うのです」
「もったいない」だけでは片付かない話のようだ。