この倦怠感は自律神経? それとも…更年期の症状は神出鬼没。妊活アプリのように「通知」が来る方法はないのか

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コクハク

倦怠感、それは突然、嵐のように…

 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まった老化現象についてありのままに綴ります。第35話は「あったらいいのに更年期通知」。

【日日更年期好日】

 こんなにも自分の体が信用できなくなるとは思わなかった。これが更年期真っ只中の女の本音。完全な治療方法もなく、病状は十人十色で個性的。ゴールも見えないまま、今日もいつ勃発するか分からない症状に怯えている。そう、数多ある症状で一番厄介なのは、更年期障害の症状は神出鬼没であること。

 先日、ちょっとした事件があった。

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 日中、カメラマンと共にロケハンをしてワンボックスカーに揺られていた。この時点ではなんともなかったのに、問題は解散後。家路に着くために今度はバスに揺られていた。混雑する車内、季節外れの暑さに対処したエアコンの冷風が当たる。発車して数分後、気分が悪くなってきた。胃がムカムカして、汗のせいか体は冷たい。まとめると倦怠感とでも言うのか。

(なんだろう、今日一日乗り物に揺られていたから、車酔い? いやそんなはずはない幼稚園から乗り物酔いだけはしなくて、むしろ酔って先生にお世話されている先頭席の友人がうらやましかったじゃないか。お昼はー……生物は食べていない。なんでこんな気持ち悪いんだろう、二日酔い? 今、もう夕方じゃん。あ、ちょっと待てよ。去年、卵巣がんになった友人、当初はすっごい気持ち悪い日々が続いたって言ってたよね。来たかな〜、来たかな〜。私ひょっとしてがん…? あれ、3月の人間ドッグ、胃酸が多かっただけだよね)

 倦怠感の原因究明だけで脳はフル稼働。たった5分足らずで、がんの疑念を持つまでに…。ま、更年期は自律神経が乱れて、気分のアップダウンも激しいので、この程度の思考は通常運転。

 途中、老人が乗車をしてきた。少し動けば譲れそうだとマナー精神が発動。が、今、立つような元気が本当にない。まんまるで小太りの元気そうなおばさん体型をしているので、見た目は俄然元気だけど、今だけ本当に具合が悪い。私は席を譲ろうと、少しだけ上げた尻をもう一度座席につけた。以前、この連載にも書いたけれどこう言うときこそ、更年期バッジが欲しい。

(もし、席を譲って、私が嘔吐したら座っている人に迷惑をかけるじゃない…? ねえ、そうだよね、ってこれ脳内の独り言か)

 バッグから水筒を取り出して、お茶を飲む。少しだけ胃が落ち着いた。こんな時に役立つので、最近は水分を携帯するようになった。できれば炭酸水を飲んだほうがさらに胃は落ち着く。そして私はぼんやりと、違う思考を始めた。

(…夕飯、何食べようかな)

 自分の体調が本当に信じられなくなる瞬間だ。バスに乗車して20分過ぎ、倦怠感がすごい、胃がおかしいとひとり脳内で騒いで病人ぶっておきながら、少し治ると、夕食に何を食べようと考え始めている。つまり食欲だけはある。悔しいけど、旺盛。これが更年期だ。知っておいてほしい。

(なんだろう、今日はカレーが食べたい。あと家にズッキーニがあったから白だしでジュワッと焼いて、ワカメとツナでマヨサラダでも作るかなあ。あ〜、気持ち悪い)

更年期通知の開発、求む!!

 結局、この日は無印良品のグリーンカレーを買って帰宅した。自宅に戻って炭酸水を飲む頃にはパソコンを立ち上げて、仕事ができるまでに回復していた。嘘みたいだけどたった半日で起きた私の体の変化。ふと、スマホの画面にInstagram投稿の通知が来ていた。皆そうだと思うけれど、アプリの通知は必要最低限に設定をしている。そうでもしなければ通知の嵐に1日追われて生きる羽目になる。

(更年期もこうやって通知が来ればいいのに)

 まだ結婚や出産を考えていた頃、生理周期をアプリで記録して通知が来るように設定しておいた。

「今日は排卵日。ベビ待ちはチャンス到来!」

 行為を人に強要されるような文言に納得がいかず、一年足らずでアプリは退会。基礎体温は手書きで記録していた。ただこれは家族一丸となる家族計画に向かって、体の状態を把握しておくアプリ。更年期は残念ながら一丸となるものはない。ホットフラッシュがある人もいれば、ない人もいる。オリジナリティ豊かな症状が特徴で、一刻も早く状態から脱却したいだけ。一体どこまでなら、緻密なこれらの症状を精査できるのか…?

「1時間後、イライラしてきます。ご注意ください」
「低気圧ともに耳鳴りと頭痛の恐れがあります。御用心ください」
「今日はホットフラッシュ危険日です。タオルを余分に持つなど、暑さ対策をお願いします」

 こんなふうに通知が来てくれたら、とても助かる。A Iがかなり進化を遂げているとは素人の私でも知っているし、ひょっとしたら可能性はあるかもしれない。もう既存のものはないかと検索をすると、更年期専用のアプリはあるらしい。ふむ、試してみるか。

(小林久乃/コラムニスト・編集者)

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