「移動」の訓練を担う理学療法士にコミュニケーションも欠かせないのはなぜか
直接患者さんとリハビリ訓練を進めていくスタッフのうち、「移動」のための運動療法を中心に行うのが「理学療法士(PT)」です。
脳卒中をはじめとした病気やケガによる片麻痺、高次脳機能障害、認知症、廃用症候群などで歩行が困難になったり、寝たきり状態になってしまった患者さんの“人間力”を回復させるためには、「起こす」「座らせる」「立たせる」「歩かせる」「コミュニケートする」ことが重要になります。これらの人が生きる上で一番の基本となる移動動作を再び獲得させるためのサポートを行うリハビリ専門職が、理学療法士なのです。
長く寝たきりだった患者さんでも、まずは「座る」ことから始めるのが基本です。
ベッドに横たわった姿勢から、上半身を起こし、足の踵を床につけ、できるだけ背もたれに頼らずに座った姿勢をキープしてもらいます。これを端座位訓練と呼びます。並行して、「立たせる」ことを行っていきます。地面に踵をつけて、膝を伸ばし、股関節を伸ばし、脊椎を伸ばし、姿勢を整えて立ってもらいます。立ち上がると全身に重力がかかり、それにより脳にも変化を感じさせることで、重力が刺激になって今度は目が開いて意識状態が向上していくのです。この際に、必須になるのが下肢装具です。