「社会は『私』をどうかたちづくるのか」牧野智和著
「社会は『私』をどうかたちづくるのか」牧野智和著
「『私』はなぜ他でもなく、今のような『私』であるのか」と考えると、これまでのさまざまな経験が、今の「私」をつくっていることに思い当たる。
「自分を変えられない」と悩む現代人は多いが、社会学では、自分は自分だけで変わることができるとはあまり考えず、他者との関係性や社会の影響を常に受け、自分を変えるために利用可能な資源も社会的状況によって異なると考えるという。
自分で自分を変える(変えられる)という考え方は自己完結的で、2000年代以降に強まる自己責任論にも通底する。「私」の社会的な成り立ちについて考えることは、この自己完結的考え方を解きほぐすことにもつながる。
本書は、この「私」の社会的成り立ちについて社会学の視点から解き明かしていくテキスト。
(筑摩書房 1034円)