(20)私に酒を教えてくれた人
名バーテンダー、大泉洋さんが亡くなった。91歳、大往生だ。
渋谷109の8階に「コレヒオ」を開いたのが1991年、私は90年代の終わり近くになって、初めて店を訪れた。私は30代の半ばで、大泉さんは、今の私(この春で63歳になる)の年回りだった。昭和ひとケタ生まれの大泉さんは、私の父と同世代なのだ。
私はその、渋谷の父に、酒を教わった。大泉さんはバーテンダーになりたての頃、赤坂のホテルにあったアメリカ軍将校クラブでオフィサーたちを相手にバーテンダーの仕事を学んだ。その後、ホテルニューオータニに移り、会員制クラブの支配人を最後に退社し、独立した。
それが、ギャルたちが集まる渋谷109にあった「コレヒオ」だ。店は後に移転して「コレオス」と名を変えるのだが、移転先はセンター街だった。マルキューとセンター街。私には無縁の場所だったが、「コレヒオ」と「コレオス」にだけは顔を出した。
銀座にも、六本木にも、青山にも、浅草にもない、独特のバーだった。米軍の将校を英語で接客し、その後は一流ホテルの客をもてなして経験を積んだ大泉さんは、57歳で独立するとき、渋谷を選んだのだ。そのこと自体が、とてもおもしろかった。なにしろ、ギャルと一緒にエレベーターに乗るのである。中にはジロジロ見てくる子もいて、オジさんは困惑するのだけれど、8階までたどり着いて「コレオス」の扉を開けると、そこは、大人の空間だった。















