手食いや不浄の左手の実際は? ムンバイ在住インフルエンサーまよさんに聞いたインド食のマナー

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 インド料理の代名詞ともいえるカレーは手で食べる──。そんなイメージは本当に正しいのか。そもそも、できたての熱々をどうやって手で食べるのか。インド料理や文化にまつわる素朴な疑問について、ムンバイ在住のインフルエンサー・まよさん(32)にぶつけてみると……。

「インドでは熱々のカレーを手で食べるんですか?」──そう単刀直入に疑問をぶつけると、返ってきた答えは衝撃だった。

「そもそもインドには、日本人がイメージするいわゆる“カレー”という料理はなくて……」

 えーーー! どういうことなのか。

「元々、ヨーグルトベースのインド料理“カリー”を指す特定の呼び名が、英国統治時代に現地の汁っぽい料理をまとめて“カレー”と呼ばれるようになったんです。インド人からすると、スパイスが入った汁物をなんでもカレーと言われるのは結構違和感があると思います。例えば日本食もラーメンとか寿司とか、しょうゆをたくさん使いますよね。でも全部同じ味じゃない。そんなイメージです」

 インドで豆料理はダール、野菜はサブジなど、それぞれ固有の名前を持つ。さらに、インドは約30の州・地域からなる連邦国家で、言語も文化も多様であるため、食もまた一枚岩ではない。

スパイスは辛さではなく香りの差を堪能するもの

「北は小麦文化、南はコメ文化という傾向はありますが、実際は民族や宗教によってまるで違います。北東部のナガランドと呼ばれる地域は、東アジアに近いせいか、発酵や燻製が多くて、いわゆる“カレー感”がほとんどありません。納豆みたいな発酵食品と豚肉を合わせたカレーが名物です。かなり辛いですが(笑)」

 辛い料理は苦手だそうだが、カレーをはじめとするインド料理は辛いというイメージも強い。実は現地で、スパイスは辛さではなく香りの差を堪能するものなのだとか!慣れていないと、“全部同じ味”に感じてしまうという。

 では、本題の「熱々問題」はどうか。

「日本みたいに、できたての熱々を食べるという感じではありません。いろいろと混ぜているうちに冷めてくるので、フーフーしながら食べることは少ないですね。コメにグレイビー(カレーのベース)を混ぜて、水分を調整して、指でまとめる。一口ずつ作るので、そこまで熱くならないですよ」

 インドの食事は、ライスやロティ(全粒粉でできた薄いパンのようなもの)にグレイビーや野菜のスパイス炒めを組み合わせ、それらを混ぜながら食べるのが基本。熱々をフーフーしながら食べるという前提自体が日本的な感覚なのだ。この点は改めておこう。

トイレとは別に手洗い場

 では、「手で食べる文化」はどうなのか。これもまた、半分は正しく、半分は違う。

「手を汚したくないときやスプーンの方が食べやすい場合は、スプーンでも食べます。骨のついている肉や魚など、手で食べやすいものは手の方が多いですね。日本人みたいに何でも箸で、というわけではなく、食べるものと状況によって使い分けているのです」

 和食のような主菜や副菜から食べるといった順番はなく、すべてを混ぜながら食べるのがインドスタイル。スプーンよりも指先のほうが細かい調整が利く。手を使う理由はいたって合理的だ。

■不浄の左手も使う

「左手は不浄とされていて、食事は右手のみで行うのが原則」という刷り込みもある。しかし、ナンやロティをちぎるときや骨付き肉を食べるときは、普通に左手を使うそうだ。手で食べるからこそ食前の手洗いは徹底されていて、レストランには、トイレとは別に手洗い場があることが多いという。

 ナンについても誤解されているそうだが……。

「ナンは家庭ではほとんど食べません。焼くにはタンドールという大きな窯が必要ですが、一般の家庭にはタンドールがないのです。外食のものですね」

 ナンは北インドの宮廷に由来する、いわば“特別なパン”。家庭で日常的に食べられているのはチャパティで、粉と塩と水を混ぜて焼くだけで簡単に作れる。原料のアタ粉は日本でも通販で簡単に入手でき、まよさんも日本にいる間に作ることがあるそうだ。

 食事の時間も独特だ。昼は午後2~3時、夜は午後9時前後。ホームパーティーでは午後11時過ぎに料理が出されることもザラだという。それぞれの食事に何度も入るのがチャイ休憩である。

「チャイは1日に何回も飲む人が多いですね。甘いし、スナックも一緒に食べるので、常にちょこちょこと食べている感じです」

 そんな食事のリズムのため常に何かを口にしているようになり、食事の時間が多少遅くても気にならないそうだ。

お弁当をシェア。でも“ジューター”に注意

 インドの食事を特徴づけるのが、料理を分け合う文化だ。

「インドではシェアの文化が強いんですよ。会社でもお弁当を持ち寄り、数人でシェアして食べています。1人では、そんなに何種類もの味を用意できませんから、分け合っていろんな味をちょっとずつ食べるイメージです」

 注意しなければいけないルールもある。

「“ジューター”といわれる考え方があり、唾液がついたものは不浄とされます。若者の間では気にしない人もいますが、それでも初対面の場合は気をつけます」

 ジューターとは、口をつけた食べ物や飲み物を“けがれたもの”とみなす概念だ。同じ皿を囲んでいても、自分の口に触れたスプーンなどで取ってしまわないようにするなど、見えない線引きが存在する。シェアと不浄。この一見矛盾するルールが同時に成り立っている点に、インドの食文化の奥行きが見える。

 気になる屋台の衛生面はどうなのか。

「地元の人に人気なお店は比較的安心ですが、インドを旅行するときは生ものを避けるのが無難です。『揚げ物だから』と油断すると、ソースのヨーグルトにあたることもあるので要注意ですね」

 まよさんは都内に住むインド人100人に「うまいインド料理店」をアンケートした。最後にオススメの店も教えてもらった。

「人気だったのは、京橋のボンベイ・シジラーズ。個人的には西葛西のトウキョウ・ミタイワラが好きですね。ベジ料理が多くて、女性でも食べやすいと思います。インド人は世界中に広がっているので、しっかり探せば、かなり本場に近い味に出合えますよ」

 インドの食は、多様で、合理的で、そしてどこか繊細だ。

▽まよ 1994年、福岡県生まれ。日本とインドをつなぐインフルエンサー。大阪大学外国語学部ヒンディー語専攻卒。大学時代のデリー留学を機にインド文化に魅了される。外資系コンサル勤務を経てYouTuberとして独立し、現在はムンバイ在住。現地のリアルな暮らしや食文化を発信し、SNS総フォロワー数は400万人以上。YouTube:日本人向け「まよ@インド沼」、インド人向け「Mayo Japan」。

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