連載最終回は人類の究極のテーマ「生と死」についての考察
養老孟司さん(解剖学者)× 名越康文さん(精神科医)
昨年2月からスタートした2人の対談は、いよいよ今回が最終回。締めくくりは人類にとって究極のテーマである「生と死」について語り合っていただいた。
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――コロナ禍、ウクライナでの戦闘長期化という状況のなかで、「生と死」という根源的なテーマを身近に考える機会が増えました。
養老 最近よく思うんですが、死についてメディアが扱うときにですね、非常にこう、平等で単一に見えちゃうんですよ。そっちに議論を持っていくと、忘れちゃうのは裏側ですね、というか本当は表側なんですけども、生きるということについての思考がおろそかになってしまう。だから、あんまり死と言わないで、いかに生きるかを強調した方がいいですね。
名越 確かにもし死を深刻にとらえたくなければ、ライフスタイルを変えていくことが大事だという気がします。その点、Z世代という10代から20代の若い人たち、ある意味で地に足をつけた世代は、分相応ということを実によく考えています。そういう人たちが田舎に行って、小さなお膳でご飯を食べることに豊かさを感じるというのは、バブルを経験している人間よりも10倍容易だろうと思います。自然に抱かれたライフスタイルのなかで、死んだら土に返るわけですから、死というものが生きることのひとつの句読点として、もう少し受け入れやすくなるんじゃないかと思います。