ホンダの苦悩 訴え続けた「運転する楽しさ」はどこへ行く
「2025年ごろをめどにレベル4を実現する」――。ホンダの八郷隆弘社長は17年6月にこう宣言した。
ホンダは手始めに、20年に高速道路で条件付き運転自動化であるレベル3に相当する技術を実用化し、その後、利用できる範囲を一般道に拡大。そして、25年をめどに高度運転自動化であるレベル4を目指すという具体的なロードマップを明らかにした。
それまでのホンダは、自動運転についてあまり積極的ではなかった。というのも、一貫して「運転する楽しさ」を訴え続けてきた会社だったからだ。ハンドルを握って自在に車を操る喜びや、アクセルを踏み込んで車を加速させる快感を念頭に開発を続けてきた会社にとって、自動運転はそれを根本から覆すものだったのである。
また、13年に発売した3代目「フィット」が1年間に5回もリコールを起こし、開発現場は大混乱。とても自動運転などの新しい開発に取り組んでいる余裕はなかった。おまけにその状況に嫌気が差した開発陣が次々に会社を去ってしまったのだ。