小池都知事が政争の具に 市場移転の迷走ぶりが今明らかに

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 政府は14日、全都道府県に発令していた新型コロナウイルスに関する「緊急事態宣言」について、茨城や石川など39県の解除に踏み切った。安倍首相が4月7日に7都府県に初の「緊急事態宣言」を発令してから1か月と1週間。この間、報道で新型コロナの感染防止策を訴える全国の都道府県知事の姿を目にする機会も増えたが、とりわけ、メディアの露出が目立つのが東京都の小池百合子知事だろう。

 小池知事は毎週の定例会見に加え、連日、動画を配信。12日も新型コロナの感染歴を調べる抗体検査について、6月から月3000件を目標に実施する計画を明らかにした。新型コロナに対する政府対応に批判が高まる中で、「世論の関心が高い話題で注目を集めるのは、いつもの小池劇場の手法」(都議)との声も出ているが、その小池知事が今、警戒している著書があるという。元都中央卸売市場次長の澤章氏が、築地市場の豊洲移転をめぐる迷走ぶりを詳細につづった「築地と豊洲」(都政新報社)だ。あらためて澤氏に築地移転問題の背景や、身近で接した小池知事の人物像などを聞いた。

 ◇  ◇  ◇

 ――中央卸売市場次長といえば、豊洲移転問題を扱う部署のナンバー2のポストです。

 私が環境局次長からポンと引っこ抜かれて、見ず知らずの中央卸売市場という部署に投入されたのは2016年9月でした。前月の8月の知事選で小池さんが圧勝し、間もなく「豊洲移転は延期」という発表があり、ちょうど庁内がドタバタしていた頃です。もともと、中央卸売市場には次長というポストはなく、市場長という一番偉い人のほかは部長がいるだけでした。役人人生の最後の最後で、今まで経験したことないような一番シビアな部署に異動ということで、何というのか、落下傘部隊で前線に投入された感がありました。

 ――メディアでも注目される築地移転の担当部署にいきなり異動させられたわけですが、配属理由は何だったのですか。

 当時は石原元都知事が豊洲移転の“戦犯”という話が出ていて、犯人さがしのために自己検証報告書をまとめる、ということになっていました。私のミッションは、その自己検証報告書を書くことでした。この時、私もそう思っていましたが、おそらく、異動させた側も短期決戦だと考えていたと思います。短期間でこの問題を収束させ、計画通りに豊洲市場に移転する。小池知事サイドのシナリオもそうだったと思います。

 ――しかし、短期間で問題は終わらなかった。

 その後、豊洲市場の地下水の汚染問題、環境基準の79倍に当たるベンゼンの検出など、次々と問題が出てきました。役人側も小池知事のシナリオも完全に狂って、ご破算となってしまい、そこから迷走が始まりました。

 ――都庁側のシナリオとは。

 汚染はあるけれども、それに対応しつつ早く移転する。そうしないと、金銭面の問題でも業者さんが宙ぶらりんになるからで、現実的な落としどころを見つけようとしていました。ところが、そのための資料をいくらまとめても、小池知事の了承、了解はなかなか得られませんでした。

■小池知事は役人を猜疑心で見ていた

 ――にべもなかったと。

 私と市場長は7階の知事の執務室で、小池知事の真横に座って市場移転について説明する立場にいました。ですので、知事の肉声や言動を間近で見ていたわけですが、ある時、築地と豊洲のどちらがいいかという議論になりました。我々は現実的、現実問題の落としどころとしては豊洲移転しかないと説明するのですが、小池知事は「あなたたちの後ろには(都議会)自民党がいるのよね」という目でみていて、「まるで、ある政党の話を聞いているみたいだったわ」とか言うのです。

「あなたたち(都議会)自民党なんでしょ」と言われたに等しかった時期もありました。当時、(知事与党の)都民ファーストはなく、自民、公明の両与党がどんといて、そんな中で、小池知事は常に役人を猜疑心で見ていたような気がします。

 ――豊洲移転について当時、小池知事はどう考えていたと思いますか。

 小池知事にしてみれば、築地がどうなろうが、豊洲がどうなろうが、そんなことはどうでもよくて、目の前の状況が自分にとって有利か不利かどうかで判断する。長期ビジョンはなく、常に仮想敵を想定し、その敵からの攻撃を避けるためにはどうするべきか。マスコミによりよく取り上げてもらうためにはどうするべきか。その基準だけだったと思います。東京都の姿はこうあるべきだとか、都民生活をこうしたいというのは微塵もなかったでしょう。

 目の前にいる人間が敵なのか味方なのか。二者択一の中で生きてきた人なんだと感じました。小池知事とは1年経っても1年半たっても、信頼関係は築けませんでしたが、とにかく、築地移転問題を「政争の具」として徹底的に利用し、都政を混乱させたのは間違いありません。それが問題長期化の最大の要因であり、傷を深くしてしまったのです。

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