「たこべえ」大ヒット 菓子職人・経営者の起死回生<前>

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山本宗禅さん(京西陣菓匠 宗禅)

 大阪の老舗おかきメーカーの4代目として生まれ、現在は京都西陣で日本唯一とされるあられの上技物の製法を継承。同時にカフェの経営や創作メニューの開発、企業のPB商品のプロデュースなども行う。今年の4月、5月には関西圏の菓子メーカーを救うべく各社の商品を詰め合わせた「福袋セット」を発売。関西では一目置かれる職人、そして経営者である。

 ◇  ◇  ◇

 そんな山本さんの半生は、まだ40代半ばながら波瀾万丈だ。物心ついた時から駅の売店などでおかきを売らされていた少年時代。幼心に「どうしたら売れるんだろう」と商売人の片鱗を見せながら、中学生になると4代目の重圧から逃げ出したくなり非行に走った。

「家出を繰り返しては仲間とバイクを乗り回していました。まさに尾崎豊の歌の世界です」

 そんな山本さんが改心したのは高校2年の時。担任でもないのに「おまえは本当はええやつだ」と事あるごとにかばい、補習授業もしてくれ、時には涙まで流してくれた教師の誠意に心打たれ、「真面目に家を継ごう」と決意。猛勉強して大学に入り、卒業後は食品卸会社に入社した。これは「いろいろなつながりができて、家業の販路拡大になる」と思ったからだ。しかしすぐ実家から呼び戻される。従業員が交通事故を起こし、さらに父親が倒れてしまったのだ。

■23歳で2億8000万円もの借金

「帳簿を見たら借金が2億8000万円もありました。バブル前の金利のまま利息が雪だるまのように膨らんでいたのです。早速銀行に掛け合い、金利を下げてもらうことに成功しましたが、自分が保証人になることが条件。23歳で3億円近い借金を背負うことになったのです」

 とりあえず応急処置は施した。次にやるべきことは瀕死の経営状態を立て直すこと。悠長なことはやっていられない。投資が少なくて済み、すぐ売れるもの……実家に戻ってすぐに作ったたこ焼き風味のせんべいをブラッシュアップし、駅売店の土産物コーナーで売ることにした。

「持ち運びしやすいよう取っ手を付けた箱に可愛らしいたこ焼きのイラストをプリントし、『たこべえ』と名付けて売ったら大ヒット。たこ焼きブームにも乗り、大阪土産ナンバーワンの座を獲得しました」

パッケージと売る場所を変えただけで大阪土産No.1に

 中身はさほど変わっていないが、パッケージと売る場所を変えただけで売り上げに大きな違いが出た。山本さんは「味だけじゃなく見た目も大事」と悟り、後の創作メニューや商品開発の成功へとつなげる。

 起死回生のヒットで会社を立て直した山本さん。借金の返済も順調に進んでいたが、25歳の時にまたしても苦境に立たされる。取引していたメイン銀行が倒産し、借金が整理回収機構へ回されたのだ。

「急に銀行からの借り入れができなくなり、取り立ても厳しくなりました。ヤクザのような男に土足で家に上がられたり、暴言を吐かれたりしたことも。従業員には給料を払えず、このまま恥をさらして生きるくらいなら潔く散ろうと自殺を決意し、思いとどまったことも一度や二度ではありません」

 従業員がほとんど辞めてしまったので、事務、販売、配達、営業と一人で何役もこなした。幸い「たこべえ」が変わらず好調で、マヨネーズソース味、関西だししょう油味とシリーズ化することで順調に売り上げを伸ばしていた。おかげで廃業の危機は免れたが、百貨店からは「たこ焼きの駄菓子屋に成り下がった」と取引を打ち切られた。そこで山本さんは思った。

「どんな状況にも左右されず、自分のやりたいことができる本物のあられ専門店をつくりたい」

 場所は妻の実家と縁のあった京都の西陣に決めた。言うまでもなく日本有数の織物の産地。一流の職人が多く、物を見る目は厳しい。だからこそそこで商売をすれば「本物に近づくことができるのではないか」と考えたからだ。そして山本さんは26歳の時、家業から独立した形で「京西陣菓匠 宗禅」を創業する。 =後編につづく

(聞き手=いからしひろき)

▽やまもと・そうぜん

 1973年、大阪のおかき屋の4代目として生まれる。26歳の時に独立、京都西陣に「菓匠宗禅」を創業。現在、日本で唯一の上技師として京のあられ・せんべいを焼き続けるとともに、2008年開店の京あられ専門カフェ「茶房 宗禅」の焼きアイス「五山に降る雪」をはじめ、西陣パフェ「ひとえふたえ」など、洋菓子の要素を取り入れた新しいメニューを次々に創作。企業のPB商品のプロデュースなども手がける。

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