東大発ベンチャー社長が手掛ける電力版メルカリ秘話<前>
豊田祐介さん(デジタルグリッド社長)=前編
電力自由化から約4年。日本の電気を取り巻く環境は変わりつつある。
■気に入った価格の電気をネット上で買える時代に
東京・丸の内に本社がある電力系ベンチャー企業「デジタルグリッド」は、今年2月から始めた〈電気をネット上で売買できるプラットフォームサービス〉が注目を集めている。売り手と買い手が希望の量や価格を入札し合い、折り合いのついた価格と量で個別に取引する仕組みは、メルカリなどのフリマアプリのよう。今は企業向けだが、いずれは、自宅の屋根の太陽光パネルでつくった電気を、服やアクセサリーのように欲しい人に気軽に売買できる日が来るかもしれないのだ。
そんな画期的な事業を手掛ける青年社長の豊田祐介さんは東大出身。祖父は元野村証券副社長で〈証券営業の神様〉と呼ばれた故・豊田善一氏、父はソニーのエンジニアと聞けば、順風満帆なエリート人生を歩んできたのだろうと思いきや……。
「中学受験に失敗しましてね。小学生で早くも挫折を味わいました。だから自分は頑張らなければいけない人間だ、他人にはない武器を持たなければならないんだと焦りましたね。それで中2の時、父のスペイン赴任についていくことに決めたんです」
いわば海外武者修行。現地のインターナショナルスクールに丸2年通った。日常会話や授業はすべて英語。海外生活の不安と寂しさを乗り越え、語学力という武器を手に入れた。