りそなHD社長 南昌宏氏「ウィズコロナで目指すは脱銀行」

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りそなホールディングス社長 南昌宏氏

 菅政権が推し進める「地銀再編」において「再編の核になる」とメディアなどで注目されているのが、りそなグループだ。3メガバンクに次ぐ大手行ながら地域金融機関の顔も持つ。超低金利にコロナ禍が追い打ちをかける中、どんなビジネスモデルを描いているのか。ウィズコロナでの金融機関の役割とは――。りそなホールディングス社長の南昌宏氏に聞いた。

■再編のカギは「共創のプラットフオーム」

 ――政府が旗振りする地銀再編について、どうお考えでしょうか。

 地域金融機関の皆さまというのは、地元を一番深くご存じの方々です。コロナもあり、世の中が変化する中で、5年先、10年先の地域金融のあり方についても、相当深く考えているところでしょう。我々も地域とリテールを軸にビジネスを展開し続けていますので、ベースはまったく同じだと思っています。地域金融の再編というと、どうしてもこれまでは資本注入ありき、システム統合ありきという2つの軸で語られてきました。しかし我々は、個別に対話させていただく中で、お困りになっていることを共に解決していく「共創のプラットフォーム」をつくっていきたいと考えています。

 ――具体的には?

 テクノロジーが進化し、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)のようなもので、比較的時間軸が短く簡便に商品サービスを提供することが可能になってきています。地域金融機関の皆さまには「地域でこういうことを展開したいんだけど何かいいものはないかな」「これまでこういう分野にはなかなか参入できなかったけれど」などのお悩みのようなものがあるのではないか。それらを資本や系列を超えて、共創のプラットフォームでご一緒させていただくことでウィンウィンの形をつくることができる。昨年は「めぶきフィナンシャルグループ(傘下に足利銀行と常陽銀行)」とデジタル分野で戦略的提携をさせていただきました。

 ――プラットフォームビジネスをベースにした緩やかな連携ですね。

 地域金融機関の皆さまを通じてお客さまとの接点が拡大するということでは、我々にとっても大きなメリットがあります。収集できるデータが広がるので、ネットワーク効果が出てくる。プラットフォームビジネスをやる上で、数の問題はやはり大きいものです。今後は1トランザクション当たりの収益性が中長期的に低くなっていく状況下で、いかに多くのお客さまと双方向でコミュニケーションを取れるかが非常に重要になってきます。

 ――つまりこれからの地銀再編は、A銀行とB銀行の2つがただ一緒になるということではない。

 A銀行とB銀行の統合というのはひとつのオプションだと思います。選択肢が広がってきている中で、地域金融機関の皆さまがどんな将来を見据えているかがポイント。そこの議論もないまま、ただ一緒になるという話では当然ないと思っています。

コロナを経てのお客さまの困り事、新しい社会課題が鮮明に

 ――コロナ禍で銀行ビジネスはどう変わるのか、どうあるべきか。

 コロナによって、世の中の常識や価値観が根底から揺さぶられました。我々のビジネスでいうと、去年の4~6月は1回目の緊急事態宣言の影響を受ける中、まずはお客さまの緊急の資金繰り対応に軸足を置いてやってきた。7月以降は、コロナを経てのお客さまの困り事、新しい社会課題が鮮明になってきました。コロナ以前から日本の産業や経済の中に潜っていた課題があぶり出されたのです。そしてもうひとつは、コロナによってデジタルやキャッシュレスのように一気に時間軸が圧縮され、変化が加速しました。サプライチェーンやバリューチェーンも構造的に変わってきています。法人のお客さまであれば、事業の転換やビジネスモデルの変更という話も出てくるでしょう。その裏側で我々は、経営改善のサポートをしっかりしていかなければなりません。

 ――確かに、社会の価値観は大きく変化しています。

 働き方や都市のあり方もそうです。今まで「よし」としてきたものの価値が、少し変わっていくということは、お客さまサイドに立った時にお悩みが変わってきているということ。お客さまの変化をサポートさせていただくためには、我々がそういうお客さまサイドに立った課題解決能力を持たなければなりません。

 ――社会課題として、コロナ禍で企業倒産は比較的抑えられたものの、廃業が加速したという問題があります。

 日本は99%が中堅・中小企業で支えられている国です。彼らの持っている技術や事業の次世代への円滑な移転は、日本経済そのものを維持・発展させていく上で非常に重要な要素です。我々は100年来、リテールで生きてきた銀行ですので、こうした事業や資産を次世代につないでいくことはひとつの使命だと思っています。今年1月、「りそな企業投資」を立ち上げました。より円滑な継承ができるような態勢を整えるために、いったん、銀行が出資や経営人材を派遣して、お客さまの成長を後押しする。こういう選択肢もご用意させていただきました。我々は商業銀行で唯一、信託機能を持っていますし、不動産の機能も併営している銀行です。事業承継のサポートにおいて、よい構えだと思っています。

■デジタルとリアルの一体化を前提に

 ――銀行というと、店舗の窓口で営業してというイメージでしたが、コロナ後は対面が難しくなっています。

 個人1600万人、中堅・中小企業50万社のお客さまと取引をいただいていますが、物理的にフェース・トゥー・フェースでお会いできているのは、もともと全体の10%くらいでした。そこで3年前に「りそなグループアプリ」というデジタルのチャネルをつくりました。スマートフォンの中で約330万人のお客さまと接点を持たせていただいています。ただ、高齢化が進む中で、フェース・トゥー・フェースも大事にしていきたい。デジタルとリアルを二項対立で捉えがちですが、我々はネットとリアルの一体化を前提にしています。垣根のない融合した世界観を目指したい。手前味噌ですが、昨年、東京証券取引所と経産省が共同で選定するDX(デジタルトランスフォーメーション)銘柄に銀行界で唯一選んでいただきました。重要なのはDよりもX。トランスフォーメーションという構造変化です。構造を変えることが顧客体験を変えることにつながっていく。この会社のDXを先頭に立って推進していきたいと思っています。

 ――アプリをつくって、ビジネスに何か変化が生まれましたか。

 データを社内で一元化して活用することで、お客さまにお会いしていただけでは分からなかった、お客さまの実像が見えてきました。例えば住宅ローン。これまでハウスメーカーやマンション業者の方々からご紹介いただいて、我々は初めてそのお客さまが住宅ローンをご利用されるということを理解してきたわけです。今はスマートフォンでお客さまが返済シミュレーションをされているなどのデータで、双方向のコミュニケーションが可能になった。こうしたデータの活用で、お客さまに提供させていただく商品の正確性やタイミングの向上につながっていくと思います。

 ――銀行も頭の切り替えが必要になったのですね。

 もともと銀行は、ご預金を頂戴して、それを貸し出しという形で提供させていただく間接金融が中心でした。しかし、社会産業構造が変わり、テクノロジーが圧倒的に進化して、お客さまの金融行動が変わった。銀行だけが昔のままでは、お客さまに支持されることはない。我々は変化に適応しつつ、変化の少し先を動きたい。

 ――そうなると、将来的には銀行は銀行ではなくなるのでしょうか。南社長は「脱・銀行」ともおっしゃっています。

 我々はどうしても業界単位で物事を捉えがちですが、今後はこの業の垣根が溶けていくと想定しています。その意味で、銀行業というものに必要以上に引っ張られることは避けたいという願望も込めて「脱・銀行」と申し上げています。銀行法があるので何でもかんでもできるわけではないのですが、「これまでの銀行はこうだった」という発想をまず変える。そして、ビジネスのあり方そのものも変える。内に閉じるのではなく、異業種の方を含めて知見やノウハウを融合させるなど、外に開く。常にお客さまのニーズを起点にして。そんな形を目指していきたいと思っています。

(聞き手=小塚かおる/日刊ゲンダイ)

▽南昌広(みなみ・まさひろ) 1965年、和歌山県生まれ。89年、関西学院大学商学部卒業後、埼玉銀行(その後、協和銀行と合併し、あさひ銀行。さらに大和銀行と合併し、りそなホールディングス)入行。りそなHDディスクグループ戦略部長、りそな銀行経営管理部長などを経て、2017年、りそなHD執行役。19年、取締役兼執行役。20年4月から現職。

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