新川「京八」おでんとコップ酒が様になるまでの修行道場
アタシが小学生だった昭和40年代は第2の学習塾ブーム。こんなアタシも通っていた。
当時は受験対策というより、学校の授業の補習が目的という塾が多かった。勉強嫌いのアタシの楽しみは塾帰りの屋台のおでん。仲良しの2、3人で屋台に寄って、はんぺんとちくわぶを串に刺してもらって食べながら帰るのである。
その屋台にはいつも先客のジイさんがおり、コップ酒をやりながら大根をつまんでいた。気持ちよく一杯やっているところにジャリどもがドヤドヤとやってくるのだから、さぞ迷惑だっただろうと、今になって申し訳なく思う。ま、それくらい、おでんは子供から年寄りまで幅広く、奥深い食べ物ということだ。
が、なかなか手ごわい相手でもある。おでんとコップ酒がサマになるには、かなりの修行を要する。今回はそんな修行道場のような店、新川の「京八」にお邪魔した。
永代橋のちょいと手前。周りは大企業のビルばかり。人通りはまばら。辺りに宵闇が迫り、北風が強くなる。おでんと燗酒にはもってこいの雰囲気である。
アタシは「寺内貫太郎一家」の藤竜也気取りで革ジャンの襟を立てて店に向かう。白く「京八」と書かれた暖簾をくぐってガラス戸をガラリ。店内に入った瞬間、おでんの湯気でメガネが曇り格好つかない還暦男。藤竜也を演じるのはここまで。初めてのアタシに「お好きな席に」と3代目の佐藤さんが優しく声をかけてくれる。立派なL字カウンターに4人掛けテーブルが2、3脚。口開け客のアタシはカウンター端に陣取る。目の前には炊飯器を改良した燗つけ器が置いてあり、その横に長方形のおでん鍋。
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