「キャンドゥ」にイオンが友好的TOB 100円ショップ再編の気になる行方
100円ショップ3位のキャンドゥ(東証1部)は流通最大手、イオンの傘下に入った。
TOB(株式公開買い付け)は2回に分けて実施した。1回目はキャンドゥ株の37.18%を上限に、21年11月24日までに1株2700円で取得済み。2回目は11月30日から12月27日までで1株2300円でTOBは成立した。
筆頭株主の城戸一弥社長らがTOBに応募する契約を交わしており友好的買収である。
株主構成を見ると、城戸一弥が発行済み株式の18.54%、2位は創業家の城戸家の資産管理会社ケイコーポレーション(東京都新宿区)で13.15%、3位が城戸社長の母の城戸恵子の9.70%(21年5月中間決算時点)だった。
イオンは1月5日付でキャンドゥ株式の51.16%を取得して連結子会社とした。買収総額は210億円にのぼる。キャンドゥは上場を維持し、一弥は社長を続投する。
イオンのTOBが刺激材料となりキャンドゥの株価は21年10月18日、2659円の昨年来高値をつけた。現在は2200~2400円での推移が続いている。
キャンドゥは城戸博司が1993年12月、埼玉県戸田市で営業を始めた。創業者の博司は2011年2月、東京都港区の自宅マンションの寝室のベッドで亡くなっているのを親族が発見した。死後2週間が経過しており、警視庁は病死と判断。長男の一弥が後任の社長に就任した。
死後すぐに発見されなかったことや、後任の社長が当時25歳と若かったこともあり、さまざまな臆測が飛び交い、株価は暴落。「存続の危機」と取り沙汰された。
だが、売り上げが右肩上がりであった上に、創業社長の急死、若い社長への交代が業績にあたえた影響が軽微だったことが幸いした。
業界3位から抜け出せるか
100円ショップ業界では寡占化が進んでいる。ダイソーを運営する非上場の大創産業(広島県東広島市)が年商5262億円(21年2月期)で独走状態。セリア(ジャスダック)が2006億円(21年3月期)で2位。キャンドゥの735億円(21年11月期の見込み)、ワッツ(東証1部)の507億円(21年8月期)と続く。
コロナ禍の商業施設の閉鎖の継続などで、既存店の月次売り上げは前年割れが続いた。21年11月期は業績を下方修正し、減益決算を余儀なくされそうだ。
出店競争が激化し、新規出店に適する地点は年々、少なくなっている。
再編の機運が高まるなか、キャンドゥはイオンの傘下に入る道を選んだ。イオングループに入れば、総合スーパー200店舗、食品スーパー2300店舗、ドラッグストア2300店舗内に出店の余地ができる。
だが、難問がある。イオンにはキャンドゥの競合相手であるダイソーやセリア、ワッツが既に出店しているし、キャンドゥはイオンの最大のライバルであるイトーヨーカ堂にも店を構えている。総合スーパーだけでなく、ドラッグストア、ホームセンターにもキャンドゥの店はあるから、“交通整理”が必要になるかもしれない。
投資家はイオンの低価格路線や環境貢献の企業姿勢に期待している。イオンの傘の下に入ったキャンドゥがAI(人工知能)を駆使した効率的な店舗運営などに積極的に取り組めるかどうかが問われている。
円安や原材料高を背景に消費者物価が高騰している。22年度は消費者が価格に一層、敏感になる。イオン・キャンドゥ連合の低価格路線が受け入れられる素地は大きくなっている。(敬称略)
=おわり