小沢コージ
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小沢コージ自動車ジャーナリスト

雑誌、web、ラジオ、テレビなどで活躍中の自動車ジャーナリスト。『NAVI』編集部で鍛え、『SPA!』で育ち、現在『ベストカー』『webCG』『日経電子版』『週刊プレイボーイ』『CAR SENSOR EDGE』『MONOMAX』『carview』など連載多数。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのカーグルメ』パーソナリティー。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)、『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)、『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた 27人のトビウオジャパン』(集英社)など。愛車はBMWミニとホンダN-BOXと、一時ロールスロイス。趣味はサッカーとスキーとテニス。横浜市出身。

ガソリン、ディーゼルと同様にバッテリーEVまで選べる…新BMW7シリーズに乗った

公開日: 更新日:

BMW i7 xDrive60(車両価格:¥16,700,000/税込み~)

 現在高級ブランドを中心に進む自動車のバッテリーEV化。そりゃそうだ。基本EVにはお金がかかり、なおかつ高級車に求められる静粛性や動力性能を比較的ラクに提供できる。よっておのずと高級ブランドほどEV市場に参入しやすくなるわけだ。

 事実、メルセデス・ベンツは「市場の状況が許す限り」という条件付きとはいえ、2030年には全車バッテリーEV化する目標だし、そもそも台数が少ない英国車ジャガーも同様。

 かたやもう一方のドイツブランドの雄、BMWもEV化には積極的で、10年前にはいち早く100%EVのi3を日本に導入したし、革新的な高級EVたるiXも、昨年日本に導入済みだ。

 が……実はEVと同時に内燃機関の可能性も見捨てておらず、2030年のEV比率目標は「50%以上」と言うにとどめたし、なにより昨年導入された最上級セダンBMW7シリーズは、フルバッテリーEV仕様のi7に加え、3ℓガソリン直6マイルドハイブリッドの740i、同ディーゼルマイルドハイブリッドの740dも同時発表した。

 電動化だけでなく他の選択肢も残す「マルチパスウェイ」戦略はトヨタが有名だが、BMWも割とそっち方向の商品構成とも取れるのだ。

内外観は3タイプとも同じ仕様に

 そこで筆者は今回、EV仕様のi7に乗ってきたのだが、まず驚いたのは見た目とサイズ。全長×全幅×全高は5390×1950×1545mmとやたらデカく、なおかつ鮮やかな2トーンボディ。斬新かつ懐かしいBMWお得意のキドニーグリルもやたらデカいだけでなくフチがLED化。おお、さすがはBMW、新たな高級EVテイストを導入してきたな? と思いきや、これは基本ガソリンでもディーゼルでも選べ、i7の専売特許じゃないという。

 このEV&エンジン車平行のマルチ戦略はインテリアも同様で、オマエはパソコンか? と言いたくなる14.9インチの巨大カーブドディスプレイも、アンタはワイドテレビか? と言いたくなるリア席の8K超大型31.3インチインチモニターも全然i7専用じゃない。740iや740dでも同じ仕様が選べるのだ。

 一方の走り味は、やはりEVならではの圧倒的出足と静粛性が売り。前後に独立した電気モーターを備えておりシステム出力544ps。同時に前後トルク配分を瞬時に最適化する4駆システムを搭載し、ステアリングフィールは超ナチュラルかつ磐石。

 とはいえ、よくよく思い返してみると、北米EVテスラのような首が痛くなるような加速ではないし、挙動のすべてがジェントル。モーター加速の無振動っぷりはかつてないレベルだが、あくまでもエンジン車をベースに、それを研ぎ澄ましたような走り味なのだ。

3タイプの価格構成にはビックリ

 というか、今や世界のクルマ好きお金持ちは、大抵なんかしらの高級EVに乗ったことがあり、イマドキの高級エンジン車はすべからくEVの走り味に近づいている。

 アクセルを踏み込んだ時のレスポンス、厚みのあるトルク、どれを取ってもi7は文句ナシだが、実は740iや740dも素晴らしいキレ味なのだ。

 なによりビックリしたのは価格構成で、電池代がかさむEVのi7が飛び抜けて高いかと思いきや、740dが1460万円、740iが1490万円、i7 xDrive60が1670万円と結構近い。いや、価格差約200万円で「やっぱEV高いじゃん」という意見もあると思うが、バッテリー容量が101.7kWhと超巨大であることを考えると意外に安い気がする。

 両方見せられて、アナタどっち買いますかって、結構悩ましい。

 今の日本の充電環境を考える、現状はディーゼルを買う人が一番多いのでは? つくづく日本のEV化はクルマ以上に設備投資とイメージにかかっている気がした、今日この頃である。

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