国民が葬った民主主義…改憲へ衆参独裁政権誕生の絶望<1>
■大マスコミの裏切りで全く伝わらなかった本当の争点
10日、投開票された参院選はやりきれない結果だった。野党共闘はある程度、奏功し、1人区で野党は11勝(21敗)した。しかし、この程度の善戦ではどうにもならず、終わってみれば、自民党が56議席と圧勝。公明党も14議席を確保した。おおさか維新の7議席を加えれば、改憲勢力は77議席を獲得。非改選の無所属議員のうち改憲賛成の4人を加えると、自公プラス改憲勢力が参院で3分の2を制してしまった。
与党は衆院ではすでに3分の2を確保しているから、これでいよいよ、国家統制を前面に押し出した改憲が現実味を帯びてくる。安倍首相はテレビで慎重姿勢を見せていたが、こんなものはポーズだ。今回の選挙結果とは、もっとも危ない暴君に、とてつもない数を与えてしまったのである。
高千穂大の五野井郁夫准教授は「2016年7月10日は歴史に刻まれる日になるだろう」と言い、こう続けた。
「日本の民主主義が形式的なものになってしまった日だからです。衆参で与党や与党協力勢力が3分の2を制するなんて、日本の民主主義の歴史においてはほとんど未踏の領域です。今でもこの政権はメディアに平気で圧力をかける。公平・中立報道をしなければ、電波停止をにおわせる。今後も言論機関に圧力をかけてくるでしょう。本来であれば、『それはおかしい』と言う野党もここまで負けてしまうと、手も足も出ない。与党議員や閣僚に疑惑があっても証人喚問はもとより、質問時間すら制限されてしまう。安倍政権は『今がチャンス』とばかりにやりたい政策を加速化させていくでしょう。グズグズしていたら、高齢化が進む安倍応援団、日本会議が許さないからです。かくて、あっという間に国の形が変わってしまう恐れがある。後世の歴史家は、この日が歴史の分岐点だったと分析するかもしれません」
それなのに、有権者の能天気だったこと。投票率は戦後4番目に低い54.7%だから、どうにもならない。大マスコミが安倍の姑息な争点隠しに加担したものだから、民主主義を賭した選挙だという自覚もなく、盛り上がらない選挙になった結果がコレなのである。民主主義は死んだも同然だが、そのことすら大マスコミは報じようとせず、従って有権者はいまだに気づかない。安倍の思うツボである。