社会部記者の最大の狙いは政界の汚職や不正だが…「1票の格差」の議論に違和感
政界を引退した大島理森前衆院議長とは一度、国会内で言葉を交わしたことがある。それはNHK記者時代に衆議院事務総長の谷福丸氏の部屋で取材している時で、大島氏が議長になるかなり前のことだ。ふらっと入ってきた大島氏に「なんで社会部の記者がこんなところにいるんだ」とギロリとにらまれた。
しかし大島氏は「何か嗅ぎまわっているのか」などと言いつつ、谷氏にうながされて座りしばらく3人で話をした。私の関心は、国会図書館や議員会館の建築・拡充、公設秘書制度の在り方、国会の決算機能の重視だった。そうした諸々についてざっくばらんにやりとりした。私は、決算を担当する会計検査院はアメリカでは議会に属していること、アメリカでは議員スタッフが充実していることなど話した。大島氏は既に知っていたかもしれないが、関心を示して聞いていた。詳しい経緯は知らないが、後に国会が会計検査院に検査要請を出せるように国会法が改正されている。
社会部の記者は政治部とは異なり、個別の議員に張りつく取材はしない。政局を取材するわけではないのと、加えて社会部記者の最大の狙いは政界の汚職や不正だ。必然的に、与野党問わずに政治家から敬遠されるところがある。大島氏とも以後やりとりはない。私自身は汚職取材はもちろんだが、加えて国会の制度にも関心をもって取材をしていた。