どうやら「凶」と出たようだ 岸田首相の派閥解消大博打(上)

公開日: 更新日:

とりわけ許しがたいのは岸田の弁明と自己保身

 裏金事件で当初、岸田の動きは鈍かった。安倍派の問題だと突き放しているようにも見えた。自分も岸田派会長として告発されているのに、無関係みたいな涼しい顔をしていたものだ。

 党内に政治刷新本部を立ち上げ、自ら本部長に就いたものの、わずか2週間で中間報告を取りまとめるという“やってる感”だけのパフォーマンス。派閥の存続を前提にしたなまぬるい議論が交わされていた。

 なにしろ岸田自身が首相になっても派閥会長を離れなかった“派閥大好き人間”である。池田勇人元首相が1957年に旗揚げした宏池会(岸田派)は、党内で最も古い名門派閥。政治家3代目の岸田は、祖父が宏池会の結成メンバーだったこともあり、「生まれたときから宏池会」とかねて派閥愛を口にしていた。

 そのうえ派閥の論理で首相に上りつめ、今も派閥に支えられている。派閥にしか興味のない岸田が派閥解散に踏み込むとは、誰も思っていなかった。

 ところが、朝日新聞が18日の朝刊1面トップで「岸田派の元会計責任者も立件対象」と報じると、その日の夜に突然、岸田派解散を言い出したのである。

 18日朝の段階では「事務処理上の疎漏」「事務的なミスの積み重ね」と愚にもつかない弁明をしていた岸田だが、「安倍派の閣僚は疑惑段階で追放したのに自分は言い逃れで居座るのか」(安倍派議員)などと党内の反発が強まり、批判をかわすために慌てて岸田派解散をブチ上げたわけだ。場当たり感は否めない。

「自らの保身のためなら、躊躇せず名門派閥を潰す岸田首相は本当に派閥に思い入れがあったのか疑問です。そもそも、護憲リベラルで軽武装・経済重視を旨とする宏池会の理念を理解していたら、米国のための防衛費倍増なんてやれるはずがない。首相になりたいがために安倍元首相の軍門に下って、宏池会の魂を売ってしまった。自分が生き延びるためなら、国民を犠牲にすることも厭わないでしょう」(本澤二郎氏=前出)

 岸田は宏池会というブランドが好きだっただけなのだろう。つくづく薄っぺらい男だ。

次は【派閥解消は「死んだふり」、禁止などできっこない利権屋集団の自民党】

■関連キーワード

最新の政治・社会記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 政治のアクセスランキング

  1. 1

    これぞ維新クオリティー!「定数削減法案」絶望的で党は“錯乱状態”…チンピラ度も増し増し

  2. 2

    やはり進次郎氏は「防衛相」不適格…レーダー照射めぐる中国との反論合戦に「プロ意識欠如」と識者バッサリ

  3. 3

    「日中戦争」5割弱が賛成 共同通信世論調査に心底、仰天…タガが外れた国の命運

  4. 4

    「おこめ券」迫られる軌道修正…自治体首長から強烈批判、鈴木農相の地元山形も「NO」突き付け

  5. 5

    「おこめ券」に続き“やってる感”丸出し…鈴木農相がひっそり進めるもう一つの肝いり政策

  1. 6

    高市政権「調整役」不在でお手上げ状態…国会会期末迫るも法案審議グダグダの異例展開

  2. 7

    「台湾有事」発言から1カ月、中国軍機が空自機にレーダー照射…高市首相の“場当たり”に外交・防衛官僚が苦悶

  3. 8

    維新が手にする血税は33億円…定数削減へチンピラまがいの圧力、税金原資にキャバクラ&ショーパブ代支出の疑い

  4. 9

    レーダー照射で日中対立激化…習近平指導部による「高市威圧」次のシグナル

  5. 10

    黄川田地方創生相が高市政権の“弱点”に急浮上…予算委でグダグダ答弁連発、突如ニヤつく超KYぶり

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    これぞ維新クオリティー!「定数削減法案」絶望的で党は“錯乱状態”…チンピラ度も増し増し

  3. 3

    「おこめ券」迫られる軌道修正…自治体首長から強烈批判、鈴木農相の地元山形も「NO」突き付け

  4. 4

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった

  5. 5

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  1. 6

    12月でも被害・出没続々…クマが冬眠できない事情と、する必要がなくなった理由

  2. 7

    やはり進次郎氏は「防衛相」不適格…レーダー照射めぐる中国との反論合戦に「プロ意識欠如」と識者バッサリ

  3. 8

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  4. 9

    黄川田地方創生相が高市政権の“弱点”に急浮上…予算委でグダグダ答弁連発、突如ニヤつく超KYぶり

  5. 10

    2025年のヒロイン今田美桜&河合優実の「あんぱん」人気コンビに暗雲…来年の活躍危惧の見通しも