著者のコラム一覧
山田隆道作家

1976年、大阪生まれ。早大卒。「虎がにじんだ夕暮れ」などの小説を執筆する他、プロ野球ファンが高じて「粘着!プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。各種スポーツ番組のコメンテーターとしても活躍中。

プロ野球のない春に2002年“井川1失点完投”TG開幕戦を想う

公開日: 更新日:

 これにはあの井川の顔が整って見えるほどの錯乱と興奮を覚えた。なにしろ12年ぶりの開幕戦勝利である。しかも巨人先発は上原浩治で、球場は巨人ファンだらけの東京ドーム。こんな痛快なことが他にあるか。

 これ以降も井川の快投は続き、02年はリーグ最多の8完投(4完封)を含む14勝9敗1セーブ、防御率2・49の大活躍で奪三振王のタイトルも獲得。阪神自体も5年ぶりとなる最下位脱出(4位)を果たすと、翌03年に18年ぶりのリーグ優勝、2年後の05年もリーグ優勝。暗黒時代から完全に脱したのだ。

 一方の井川というと、そこから本当にいろいろあった。

 02年から06年までは03年の20勝を含む5年連続2ケタ勝利を挙げ、沢村賞や最多勝など数々の投手タイトルを獲得した他、ノーヒットノーランも達成。しかし、07年のMLB移籍から人生が急転直下し、40歳を過ぎた今は引退こそ明言していないものの、すっかり過去の人となった。

 だけど、私にとって井川はやっぱり特別な存在だ。長く厳しかった暗黒時代の終わりに救世主のごとく現れた納豆嫌いのあかぬけない茨城男。ラジコンヘリやゲーム、名探偵コナンが大好きなオタク気質で、野球よりもサッカーの話題になったほうが熱く語り、クセ毛なのに汚らしい長髪にするもんだからアンチに笑われ、大食漢で倹約家で下戸で口下手で無表情でマイペースで協調性がなくて、たぶん空気を読めるタイプでもないんだろうけど、だけど、我が阪神を2度の優勝に導いてくれたエースで、開幕11連敗のトラウマを払拭してくれた恩人なのだ。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  2. 2

    高市政権の物価高対策はもう“手遅れ”…日銀「12月利上げ」でも円安・インフレ抑制は望み薄

  3. 3

    元日本代表主将DF吉田麻也に来季J1復帰の長崎移籍説!出場機会確保で2026年W杯参戦の青写真

  4. 4

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  5. 5

    京浜急行電鉄×京成電鉄 空港と都心を結ぶ鉄道会社を比較

  1. 6

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  2. 7

    【時の過ぎゆくままに】がレコ大歌唱賞に選ばれなかった沢田研二の心境

  3. 8

    「おまえもついて来い」星野監督は左手首骨折の俺を日本シリーズに同行させてくれた

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾