310三振の権藤博氏が一つも奪えず 長嶋茂雄の打撃技術語る

公開日: 更新日:

権藤博(野球評論家)

 1961年、入団1年目の権藤氏はとんでもない数字を残す。登板69試合で35勝19敗、防御率1・70。実に310個の三振を積み上げた。最多勝、防御率、奪三振、沢村賞などのタイトルを総なめにしたが、そんな22歳のルーキーも歯が立たない打者が一人だけいた。

「ミスタープロ野球、長嶋(茂雄)さんです。面白くもなんともない答えだけど、凄いと思ったのは、あの人をおいてほかにいない。310三振を奪った私が長嶋さんからはただの一つも取れなかった。あの年の対戦打率は・448ですよ。てんぐの鼻をものの見事にへし折られましたね」

 シーズン序盤、権藤氏が投げたカーブに長嶋は尻もちをついてよけた。判定はストライク。タイミングが合っていないとみて、カーブを続けた。同じようにのけ反り、ヨシッ!と思ったら、打球は右翼前に弾んでいた。

「体勢が崩れて顎が上がろうが、大きくアウトステップしようが、右手とバットのヘッドは残っているから、球にコンタクトできる。体が突っ込むと、スイング途中で左手をバットから離すこともありましたね。そうやって右手一本で球をとらえるんです。半面、投球が真ん中に入って、しまった! と思ったら内野フライ。つかみどころがないというか、そんなことも含めて、やっぱり超人的な打者でしたよ」

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